私は目の前の女の子の目をじっと見つめた。
光が灯らない闇のそこのような瞳だった。
「人違いじゃないかな」
私は何事もな気に答えた。
「ちがうよ。エミのこと忘れちゃったの?エミと遊んでくれるってヤクソクしたのに?お姉ちゃんの嘘つき……ウソツキ……」
女の子はやがてウソツキとしか繰り返さない。
まるで壊れたおもちゃみたいだ。
言葉を忘れ、ただ動き回るしかない赤ん坊みたいだ。
「私はそんな約束した気はないけど……気の所為じゃないかな」
「ウソツキ……ウソツキ……」
だから、そんな約束していない。
「私と誰かを間違えてるとか」
「ウソツキ……ウソツキ……」
何度ウソツキと呼ばれても、私にはこの子と約束した記憶なんてないし、他人がしてしまったことだから、どうしようもない。
「嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘」
「お前との約束なんて知らないわ。いい加減にしてちょうだい」
私は女の子の首に手をかけた。
言葉で通じないなら、やることは一つしかない。
大丈夫。
もう既に何度もやったことがある。
今更恐れる必要なんてない。
ずっと嘘としか言わない女の子に言ってあげよう。
私は女の子に微笑んで言った。
「大丈夫。楽にしてアゲルわ」
首をググッと締め上げた。
女の子は苦しそうにもがくこともせず、なされるがままだ。
大丈夫。
私は楽にしてあげるだけなんだ。
きっと大丈夫。
この子も救われる。
私が救済してあげるんだ。
その時、女の子のポケットから何かが転げ落ちた。
くしゃくしゃのゴミだった。
よく見るとなにかの植物のようだった。
色あせてしまって元の形なんて分からないほどだ。
そんなゴミに等しいものを見て、私は何か思い出そうとした。
「これね、お姉ちゃんがエミにくれた銀杏の葉っぱなんだよ。お守りにしてるの」
さっきまで嘘としか言えなかったエミが奇跡的に治った。
「銀杏には花言葉が素敵なんだって。後でね、姫ちゃんが教えてくれたの。だからね、お母さんに見せてあげたんだ」
まるで幸せでたまらないというように、エミは話す。
「お母さんは何も言ってくれなかったけど……お姉ちゃんは、見てくれた。エミはとっても嬉しいな」
昔、寄り道した村に確かエミという女の子がいた。
足が動かなくなる病気にかかっていて、自分で家から一歩も出ることが出来なかった可哀想な女の子。
いつか自分の足で歩くことを夢見る姿が可哀想で、皆で車椅子を作ってプレゼントしたんだっけ。
確かそうだった。
それで…………それで…………
そうだ。
私が✕したんだっけ。
光が灯らない闇のそこのような瞳だった。
「人違いじゃないかな」
私は何事もな気に答えた。
「ちがうよ。エミのこと忘れちゃったの?エミと遊んでくれるってヤクソクしたのに?お姉ちゃんの嘘つき……ウソツキ……」
女の子はやがてウソツキとしか繰り返さない。
まるで壊れたおもちゃみたいだ。
言葉を忘れ、ただ動き回るしかない赤ん坊みたいだ。
「私はそんな約束した気はないけど……気の所為じゃないかな」
「ウソツキ……ウソツキ……」
だから、そんな約束していない。
「私と誰かを間違えてるとか」
「ウソツキ……ウソツキ……」
何度ウソツキと呼ばれても、私にはこの子と約束した記憶なんてないし、他人がしてしまったことだから、どうしようもない。
「嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘」
「お前との約束なんて知らないわ。いい加減にしてちょうだい」
私は女の子の首に手をかけた。
言葉で通じないなら、やることは一つしかない。
大丈夫。
もう既に何度もやったことがある。
今更恐れる必要なんてない。
ずっと嘘としか言わない女の子に言ってあげよう。
私は女の子に微笑んで言った。
「大丈夫。楽にしてアゲルわ」
首をググッと締め上げた。
女の子は苦しそうにもがくこともせず、なされるがままだ。
大丈夫。
私は楽にしてあげるだけなんだ。
きっと大丈夫。
この子も救われる。
私が救済してあげるんだ。
その時、女の子のポケットから何かが転げ落ちた。
くしゃくしゃのゴミだった。
よく見るとなにかの植物のようだった。
色あせてしまって元の形なんて分からないほどだ。
そんなゴミに等しいものを見て、私は何か思い出そうとした。
「これね、お姉ちゃんがエミにくれた銀杏の葉っぱなんだよ。お守りにしてるの」
さっきまで嘘としか言えなかったエミが奇跡的に治った。
「銀杏には花言葉が素敵なんだって。後でね、姫ちゃんが教えてくれたの。だからね、お母さんに見せてあげたんだ」
まるで幸せでたまらないというように、エミは話す。
「お母さんは何も言ってくれなかったけど……お姉ちゃんは、見てくれた。エミはとっても嬉しいな」
昔、寄り道した村に確かエミという女の子がいた。
足が動かなくなる病気にかかっていて、自分で家から一歩も出ることが出来なかった可哀想な女の子。
いつか自分の足で歩くことを夢見る姿が可哀想で、皆で車椅子を作ってプレゼントしたんだっけ。
確かそうだった。
それで…………それで…………
そうだ。
私が✕したんだっけ。