「お邪魔しました。」
そう言って、部屋の鍵とチップを渡した。
宿主は、ふたつを受け取って懐に収めると外まで見送ってくれた。
私は手を振り返し、マジは軽く頭を下げた。
十分振った頃に体を前に向けようとすると、ちょうど前から歩いてきた人にぶつかった。
「すみません」
「い……いえ。こちらこそ……」
口をごもごもさせて謝罪をするとその人は駆け足で行ってしまった。
見る限りに怪しい。
それにおかしな気配がする。
なんというかゾワゾワする感じだ。
さっきの人が去っていった方向をじっと見つめていると、マジは髭を触りながら言った。
「さっきのは、魔王軍の元幹部が取り憑いているのじゃろう。何度か顔を見た事があるが……何かあったのじゃろうな。」
「……嗚呼……確か、ブラ……ブル…だったっけ……ブラ……ブラスト…ラトスだったっけ。確かそんな気がする。」
「……それは誰じゃ。推測でしかないが、恐らくメフィストフェレスという奴じゃ。」
「そういえばそんな感じだった。」
マジは「少しも掠っていない」と苦笑しているが、魔族の名前は難しい。
序列やらなんやらがあって、そこから長い名前が続くと覚えにくいのだ。
そこが人間との文化の違いか。
それにしてもメフィストフェレスといえば、有名な悪魔だ。
確か私がまだ勇者パーティで活動している最中に、教会は悪魔撲滅と躍起になって彼を追い回していたはず。
悪魔が生き残ることを嫌がる教会が彼を生かすわけない。
そうすると生き返ったとか……有り得るのか。
そんな悪魔信者のような人間が教会にいるとか。
まあ、そんなこと私には関係ないわけで。
「さあ、行こう。」
「儂がいうのもあれなんじゃが、放っておいていいのか?」
「意外なことを言うのね。いいのよ。面倒事に関わるのはよしましょう。」
私はまた歩き出した。
すると、目の前に引越しをすると有名の鳥が飛び出してきた。
親鳥の後を雛がついてまわる。
滅多に見ない種で思わずじっと見つめていた。
その時、トントンと軽く肩を叩かれた。
心臓が大きくドクッと音を立てた気がする。
気配に気づかなかった。
私の後ろに誰かいることに。
マジをちらりと見るが、何も気付いてなさそうだ。
足を止め振り向くと何も無い。
気の所為か。
安堵の息をついた。
気配に鋭すぎるのも良くないのかもしれない。
何気ない行動に思考を回しすぎると、肝心な時に使えない。
「疲れてるのか。」
「疲れているのなら、休むか?昨日宿でもあまり寝れていなかったじゃろう。」
確かに今日はぐっすり寝れていない。
だからと言って、そこまで疲れている訳では無い。
身体を壊さない範囲は元気だと考える。
それがこれまでの人生の教訓だ。
「いや、先に進もう。今日の宿を探さないと」
「なら、いいんじゃが。」
もう1度足を進めようとした。
その時、首を触られたような気がした。
冷たい何かを首に当てられた感じだ。
首に手を当てると自分の首の熱を感じるだけだった。
なんだ。
なんなんだ。
さっきから、変な感じがする。
疲れで済まされるものなのか。
「本当に大丈夫か?休むなら、付き合うぞ。」
「いや、本当に大丈夫。」
本当に大丈夫だと思うのだが。
額に手を当ててみるが、熱があると感じなかった。
ただの不調なのか。
はたまたなにかの病にかかっているのか。
「お姉ちゃん。」
今度は幼い子供の声が耳元で聞こえた。
振り向くも子供なんて居なかった。
しかし、どこかで聞いたことがある。
だが、思い出せない。
「お姉ちゃん、遊ぼうよ。」
また、さっきと同じ声だ。
胸の奥が締め付けられる感じがする。
私は、この声に何を感じているのだろう。
「エミを✕したのはお姉ちゃんでしょ。」
嗚呼……
目の前に女の子がいた。
そう言って、部屋の鍵とチップを渡した。
宿主は、ふたつを受け取って懐に収めると外まで見送ってくれた。
私は手を振り返し、マジは軽く頭を下げた。
十分振った頃に体を前に向けようとすると、ちょうど前から歩いてきた人にぶつかった。
「すみません」
「い……いえ。こちらこそ……」
口をごもごもさせて謝罪をするとその人は駆け足で行ってしまった。
見る限りに怪しい。
それにおかしな気配がする。
なんというかゾワゾワする感じだ。
さっきの人が去っていった方向をじっと見つめていると、マジは髭を触りながら言った。
「さっきのは、魔王軍の元幹部が取り憑いているのじゃろう。何度か顔を見た事があるが……何かあったのじゃろうな。」
「……嗚呼……確か、ブラ……ブル…だったっけ……ブラ……ブラスト…ラトスだったっけ。確かそんな気がする。」
「……それは誰じゃ。推測でしかないが、恐らくメフィストフェレスという奴じゃ。」
「そういえばそんな感じだった。」
マジは「少しも掠っていない」と苦笑しているが、魔族の名前は難しい。
序列やらなんやらがあって、そこから長い名前が続くと覚えにくいのだ。
そこが人間との文化の違いか。
それにしてもメフィストフェレスといえば、有名な悪魔だ。
確か私がまだ勇者パーティで活動している最中に、教会は悪魔撲滅と躍起になって彼を追い回していたはず。
悪魔が生き残ることを嫌がる教会が彼を生かすわけない。
そうすると生き返ったとか……有り得るのか。
そんな悪魔信者のような人間が教会にいるとか。
まあ、そんなこと私には関係ないわけで。
「さあ、行こう。」
「儂がいうのもあれなんじゃが、放っておいていいのか?」
「意外なことを言うのね。いいのよ。面倒事に関わるのはよしましょう。」
私はまた歩き出した。
すると、目の前に引越しをすると有名の鳥が飛び出してきた。
親鳥の後を雛がついてまわる。
滅多に見ない種で思わずじっと見つめていた。
その時、トントンと軽く肩を叩かれた。
心臓が大きくドクッと音を立てた気がする。
気配に気づかなかった。
私の後ろに誰かいることに。
マジをちらりと見るが、何も気付いてなさそうだ。
足を止め振り向くと何も無い。
気の所為か。
安堵の息をついた。
気配に鋭すぎるのも良くないのかもしれない。
何気ない行動に思考を回しすぎると、肝心な時に使えない。
「疲れてるのか。」
「疲れているのなら、休むか?昨日宿でもあまり寝れていなかったじゃろう。」
確かに今日はぐっすり寝れていない。
だからと言って、そこまで疲れている訳では無い。
身体を壊さない範囲は元気だと考える。
それがこれまでの人生の教訓だ。
「いや、先に進もう。今日の宿を探さないと」
「なら、いいんじゃが。」
もう1度足を進めようとした。
その時、首を触られたような気がした。
冷たい何かを首に当てられた感じだ。
首に手を当てると自分の首の熱を感じるだけだった。
なんだ。
なんなんだ。
さっきから、変な感じがする。
疲れで済まされるものなのか。
「本当に大丈夫か?休むなら、付き合うぞ。」
「いや、本当に大丈夫。」
本当に大丈夫だと思うのだが。
額に手を当ててみるが、熱があると感じなかった。
ただの不調なのか。
はたまたなにかの病にかかっているのか。
「お姉ちゃん。」
今度は幼い子供の声が耳元で聞こえた。
振り向くも子供なんて居なかった。
しかし、どこかで聞いたことがある。
だが、思い出せない。
「お姉ちゃん、遊ぼうよ。」
また、さっきと同じ声だ。
胸の奥が締め付けられる感じがする。
私は、この声に何を感じているのだろう。
「エミを✕したのはお姉ちゃんでしょ。」
嗚呼……
目の前に女の子がいた。