「お姉ちゃん!お姉ちゃんはどうしてここにいるの?エミはねえ!死んじゃったの!お姉ちゃんのせいで。」


エミは私の首に手を伸ばした。
私は何も抵抗せずに、されるがまま首に手をかけられた。
冷たい子供の手。
私は、こんな幼い子を手にかけてしまったのか。
私の足を深い沼が捉える。
エミと一緒に身体はズブズブと奥深くに引きずり込まれていく。
やがて私の下半身は沼の中に沈み、私は身動きが取れなくなってしまった。


「エミはね、お姉ちゃんが助けてくれると思って待ってたの!どれだけ怖くても。辛くても。お姉ちゃんは神様だから!」


やめてくれ。
私は、平常心を保てずに耳を塞いだ。
私だって、一生懸命だったんだ。
勇者一行といったも所詮人間だ。
できないことの方が多い。
でも、周りは勇者一行であるから、勇者であるからと言って、平等な扱い・救いを求めてくる。


「儂は勇者様を信じております。必ず助けてくださると。そうでなければ、勇者様が現れる訳ありますまい。まさか、出来ないとは仰りませんな。」


いつしか聞いたとある村の村長の言葉だ。
ケイは、勇者だけが取り柄だという訳では無い。
勇者(ケイ)にだっていい所はいっぱいある。
そんな言い方しないでくれ。


「王女が勇者一行に加わるとは国王は何をお考えなのか……そんなの足でまといにしかならないだろうに。」


確かに最初はお荷物だった。
でも、今は凄い魔法使いになっている。
防衛も彼女(ユナ)に任せることも多くなっていた。
それに、私の親友だ。
彼女を悪くいう奴のは気に入らない。


「彼奴って、あの村の荒くれ者だよな。なんで彼奴が勇者一行になったんだ。勇者様は人を見る目があると思っていたんだが、よりにもよって人殺しを選ぶとは。」


荒くれ者とは正しく(武闘家)にピッタリだ。
いつも脳筋な発想ばっかりで、考えることが苦手なケイとはよくウマが合っていた。
何も事情を知らないのに確かめもしないで噂を信じるとは、なんとも残念なことか。



「それに、あの盗賊団の頭がいるんだろ。勇者は本当に変わったヤツだといわれているが、イカレちまってるんじゃねえか。だって、そうでもなきゃ、あんな存在価値のないゴミみたいな奴を仲間にしようなんて思わねえだろ。」


ゴミみたいな、ね。
思わず自嘲的な笑いをしてしまった。
確かに、その通りだ。
生きていてもしかなたがない、私をどうしてケイは助けてくれたのだろうか。
非難轟々で、ケイの立場も危うかっただろうに。