「レミィ!やめてくれぇぇえええ!」
ケイの叫び声が聞こえる。
痛みで立つこともできないのに、どこにそんな力があるんだか……
彼はそういえば底なしの体力の持ち主だったな。
なんて考えながら、カイの首を掻ききった。
力なく倒れる元仲間。
「なんで、こんなことするんだよ!」
私の側までケイが這いつくばりながら近づいてくる。
身体に鞭を打って血反吐を吐きながら、それでも確実に1歩ずつ進んでくる。
「そうしなければならなかった。それ以上の理由はないよ。」
「俺にも言えないことなのか?そうしてまでお前が欲しかったものは何だ!金か?領地か?」
違うの。
私が欲しいものは金でも領地でもないの。
ただ、こうしないとそれは壊れてしまいそうだから。
私が護らないといけないの。
「答えろよ!何黙ってんだよ!」
這いつくばりながら進んで私の元まで辿り着いたケイが、私の足を掴んだ。
死にかけの人間とは思えないほど強く。
ごめんなさい。ごめんなさい。
それでも、どうしてもこれは譲れないの。
「ごめん。ごめん。ごめんね、皆。」
視界がとめどなく溢れる涙で滲む。
涙も嗚咽も止めようとしても止まってくれなかった。
胸の奥を突かれたみたいに苦しい。
「そうかよ……そこまで言いたくないんだな。」
ケイはいつもみたいに呆れた顔をして、地面に身体を預けた。
それでも、離さないというように足は力強く握られている。
「これだけは譲れない。ごめん、ケイ。」
嗚咽を堪えながら謝ると、返事をするように足を掴んでいたケイの手が崩れ落ちて地面の上で転がった。