マリーが指を鳴らした後、先ほど事務所で騒いでいた、赤髪の青年が会議室に入ってきた。
「マリー! なんだよ! こっちは忙しいんだよ!」
「あんたね、私は一応社長なの! 口の利き方がなってないね!」
「うっせーな! 俺はそれくらいフレンドリーな社風がいいんだよ!」
赤髪の青年は会議室に入ってくるなり、マリーと言い合いを始めた。ヒカリは魔女玉を首に掛けながら席から立ち上がり、二人の様子を黙って見ていた。
「まぁ、いいわ。しっかりこの子の世話しなさいよ」
マリーがヒカリを指差しながら言う。
「はっ? なんで俺が?」
赤髪の青年は世話役の話が初耳だったのか、驚いた表情を見せた。
「この前の仕事の赤字分、あんたの給料で払ってもらっても構わないんだけど? どうする?」
マリーは赤髪の青年に対して少し脅すように言った。
「ぐっ……。……わかったよ。やればいいんだろ」
赤髪の青年は痛いところを突かれたのか一瞬で冷や汗を流し、顔を下げながら悩んでいるような表情を見せた後、マリーの要求に応じた。おそらく、赤髪の青年は仕事で大きな赤字を出してしまったのだろう。
「ふふ。決まりね。お互い挨拶しなさい」
マリーはそう言って赤髪の青年とヒカリの間に立った。
「……はじめまして! 私は『ヒカリ』って言います! まだまだわからないことばっかりですが、よろしくお願いします!」
ヒカリは赤髪の青年に挨拶をして深々と頭を下げた。少ししてからヒカリが頭を上げると、赤髪の青年と目が合う。すると、赤髪の青年は一瞬固まった後、すぐに目をそらした。
「……お、俺は、『エド』っていう……よ、よ、よろしく……」
エドはなぜか言葉が詰まり気味だった。
「あれー? エド、どうしたのー? そんなに顔を赤くして」
マリーはエドに対して、からかっているような口調で言った。
「な、なってねぇよ! バーカ!」
エドはからかわれたことに怒ったのだろうか、マリーに言い返していた。言われたマリーは笑っていた。
「今日のところは、皆にヒカリを紹介してあげてちょうだい。ばら園の方はシホが引率するように言ってあるから」
マリーはエドにそう言うと、ニヤッと笑みを浮かべていた。
「シホに頼んだのは、とってもとっても忙しいエド君を気遣ってあげたからですよー」
またマリーはエドをからかっているような言い方をした。
「あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す!」
エドは歯を食いしばった感じでマリーにお礼を言う。その後、マリーは会議室を出ていった。
「えっと、マリーさんとエドさんは、いつもこんな感じなんですか?」
ヒカリはエドに尋ねた。
「まぁ、そうだな」
エドは少し疲れているような様子で答えた。
「……それと、『エド』でいいし。ため口で話してくれな。その方が気が楽だからさ」
エドは少し落ち着いた口調でそう言った。ヒカリはエドがさっき言っていた『フレンドリーな社風がいい』という言葉を思い出し、エドは誰とでも垣根なく接していきたい人なのだろうと察した。なぜだか嬉しい気持ちが湧き上がってきているのは、エドがなんとなく怖い人じゃないとわかり少し安心したことと、自分を仲間扱いしてくれたことが原因なのかもしれない。
「わかった! よろしくね! エド!」
ヒカリは笑顔で言った。
「おう!」
エドも笑顔で返してくれた。
「じゃ、ROSEの社員を紹介していくか」
エドはそう言いながら会議室の扉を開けた。ヒカリとエドが会議室を出ると、ドタバタと社員が集まってきた。
「へぇー、新入社員だったんだね! どちらから来たんですか? エドの彼女か? 彼女じゃねえよ! なんで顔赤くなってんだよ! うっせーな! お茶飲みます? 風になりたくないか? 俺はリン、顔良し、強さ良し、性格良しの最強イケメン魔法使いだ!」
社員達がヒカリに勢いよく詰め寄りながら、一斉に話しかけた。ヒカリは急すぎて戸惑ってしまう。
「ちょっと待て待て! 俺が紹介する役目なんだよ!」
エドはヒカリと集まってきた社員との間に割り込み言い聞かせる。
「後輩ができて調子に乗ってるな」
集まってきた社員全員が口を揃えてエドに言った。
「なんでそこは息ピッタリなんだよ!」
エドは怒りをこらえているような仕草で言う。
「じゃ、一人ずつ簡単に紹介していくか。まずは……一番人数の多い任務実行員から」
エドがヒカリに社員紹介を始めた。
「任務実行員?」
ヒカリは任務実行員という言葉を初めて聞いたので、気になりエドに問いかけた。
「あぁ、そっか。そこから話をしていかなきゃな。……まず、この会社には職種が三つある。一つ目は『受付員』で、相談所に来たお客から依頼内容を確認したりする仕事。二つ目は『事務員』で、依頼内容を詳しく確認したり費用を算出したりする仕事で、電話の窓口にもなっている。三つ目は『任務実行員』で、実際に依頼を遂行する仕事。そして、マリーが任務実行員への仕事の割り振りを決めている。そんなとこだ」
ヒカリはうなずきながらエドの話を聞いた。
「それじゃ、任務実行員を紹介していく。……まずはケンタ! 見た目どおり食欲バカだ!」
「バカは余計だ!」
ケンタはオレンジの髪をさっぱりと持ち上げたスタイルで、お世辞にも痩せているとは言えないくらい太っている、三十歳手前くらいの男の人だ。体つきからしても、たくさん食べる人なのだろう。
「次はライアン! ケンタと同い年でバイクバカだ!」
「バイクは好きか?」
ライアンは少し青みがかった黒髪を、オールバックにしている男の人だ。室内にも関わらず、サングラスをしているのは、きっとポリシーなのだろうか。
「次にリン! せっかくの容姿がもったいないナルシスト野郎だ!」
「俺はリン、顔良し、強さ良し、性格良しの最強イケメン魔法使いだ!」
リンは深緑色のイケメン風な髪型の二十歳くらいの男の人だ。たしかにナルシストな発言とポーズをしているので、そうなのかもしれない。
「そして最後に……俺も任務実行員だ」
エドも自分を指差しそう述べた。
「次に受付員のシホ。去年入社したばかりだけど、めちゃくちゃ仕事ができる期待の社員。今のところ受付員は、シホ一人でこなしている」
「よろしくね!」
シホはニッコリ笑いながらそう言った。
「次は事務員を紹介していく。……まずはマツダ。すっごく几帳面でめっちゃ仕事ができる。それとパソコンとか詳しいから、すごく頼りになるおっさんだ」
「困ったらいつでも声をかけてくださいね」
マツダは黒縁メガネをしていて、灰色の髪と口髭が特徴的なおじさんだ。男性社員で唯一ループタイを首まで締めていて、アームカバーも装着しているところを見ると、きっと真面目な性格なのだろう。
「あと一人の事務員はベル。まだ十四歳くらいの子供だ」
「はぁー? 何言ってるんですか? 今年で十七歳になるんですよ! 学校には通っていませんが、高校生の年齢なので、もう大人みたいなもんです!」
最初に事務所でエドと騒いでいた女の子は、ベルという名前らしい。身長がだいたい百四十センチメートルくらいの細身で小柄な可愛らしい女の子だ。
「これで社員は全員だ」
エドがそう言うと、ヒカリは集まってきた社員に一歩近づく。
「あの……。私の名前は『ヒカリ』と言います! 魔女見習いとして今日からお世話になります! えっと……どうか、よろしくお願いします!」
ヒカリは深々と頭を下げて挨拶をした。頭を上げると集まってきた社員達が、ヒカリに『よろしく』と返事をして自席に戻っていく。
「こんな奴らだけど悪いやつはいない。とりあえず、仕事しながら仲良くなっていけばいい」
エドは落ち着いた表情でそう言うと、事務所の奥に座っているマリーの方を向いた。
「マリー! そういや、ヒカリは何の仕事をするんだ?」
エドはマリーに問いかける。
「シホと一緒に受付の仕事かな……」
その言葉を聞いたシホとヒカリは、お互い目を合わせる。
「よろしくね」
シホは優しい笑顔を浮かべながらヒカリに言った。
「よろしくお願いします!」
ヒカリはまた深々と頭を下げてシホに挨拶をする。
「じゃ、シホ! ばら園の方にヒカリの紹介よろしくな!」
エドがシホに向かってそう言うと、シホはうなずいていた。
「マリー! なんだよ! こっちは忙しいんだよ!」
「あんたね、私は一応社長なの! 口の利き方がなってないね!」
「うっせーな! 俺はそれくらいフレンドリーな社風がいいんだよ!」
赤髪の青年は会議室に入ってくるなり、マリーと言い合いを始めた。ヒカリは魔女玉を首に掛けながら席から立ち上がり、二人の様子を黙って見ていた。
「まぁ、いいわ。しっかりこの子の世話しなさいよ」
マリーがヒカリを指差しながら言う。
「はっ? なんで俺が?」
赤髪の青年は世話役の話が初耳だったのか、驚いた表情を見せた。
「この前の仕事の赤字分、あんたの給料で払ってもらっても構わないんだけど? どうする?」
マリーは赤髪の青年に対して少し脅すように言った。
「ぐっ……。……わかったよ。やればいいんだろ」
赤髪の青年は痛いところを突かれたのか一瞬で冷や汗を流し、顔を下げながら悩んでいるような表情を見せた後、マリーの要求に応じた。おそらく、赤髪の青年は仕事で大きな赤字を出してしまったのだろう。
「ふふ。決まりね。お互い挨拶しなさい」
マリーはそう言って赤髪の青年とヒカリの間に立った。
「……はじめまして! 私は『ヒカリ』って言います! まだまだわからないことばっかりですが、よろしくお願いします!」
ヒカリは赤髪の青年に挨拶をして深々と頭を下げた。少ししてからヒカリが頭を上げると、赤髪の青年と目が合う。すると、赤髪の青年は一瞬固まった後、すぐに目をそらした。
「……お、俺は、『エド』っていう……よ、よ、よろしく……」
エドはなぜか言葉が詰まり気味だった。
「あれー? エド、どうしたのー? そんなに顔を赤くして」
マリーはエドに対して、からかっているような口調で言った。
「な、なってねぇよ! バーカ!」
エドはからかわれたことに怒ったのだろうか、マリーに言い返していた。言われたマリーは笑っていた。
「今日のところは、皆にヒカリを紹介してあげてちょうだい。ばら園の方はシホが引率するように言ってあるから」
マリーはエドにそう言うと、ニヤッと笑みを浮かべていた。
「シホに頼んだのは、とってもとっても忙しいエド君を気遣ってあげたからですよー」
またマリーはエドをからかっているような言い方をした。
「あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す!」
エドは歯を食いしばった感じでマリーにお礼を言う。その後、マリーは会議室を出ていった。
「えっと、マリーさんとエドさんは、いつもこんな感じなんですか?」
ヒカリはエドに尋ねた。
「まぁ、そうだな」
エドは少し疲れているような様子で答えた。
「……それと、『エド』でいいし。ため口で話してくれな。その方が気が楽だからさ」
エドは少し落ち着いた口調でそう言った。ヒカリはエドがさっき言っていた『フレンドリーな社風がいい』という言葉を思い出し、エドは誰とでも垣根なく接していきたい人なのだろうと察した。なぜだか嬉しい気持ちが湧き上がってきているのは、エドがなんとなく怖い人じゃないとわかり少し安心したことと、自分を仲間扱いしてくれたことが原因なのかもしれない。
「わかった! よろしくね! エド!」
ヒカリは笑顔で言った。
「おう!」
エドも笑顔で返してくれた。
「じゃ、ROSEの社員を紹介していくか」
エドはそう言いながら会議室の扉を開けた。ヒカリとエドが会議室を出ると、ドタバタと社員が集まってきた。
「へぇー、新入社員だったんだね! どちらから来たんですか? エドの彼女か? 彼女じゃねえよ! なんで顔赤くなってんだよ! うっせーな! お茶飲みます? 風になりたくないか? 俺はリン、顔良し、強さ良し、性格良しの最強イケメン魔法使いだ!」
社員達がヒカリに勢いよく詰め寄りながら、一斉に話しかけた。ヒカリは急すぎて戸惑ってしまう。
「ちょっと待て待て! 俺が紹介する役目なんだよ!」
エドはヒカリと集まってきた社員との間に割り込み言い聞かせる。
「後輩ができて調子に乗ってるな」
集まってきた社員全員が口を揃えてエドに言った。
「なんでそこは息ピッタリなんだよ!」
エドは怒りをこらえているような仕草で言う。
「じゃ、一人ずつ簡単に紹介していくか。まずは……一番人数の多い任務実行員から」
エドがヒカリに社員紹介を始めた。
「任務実行員?」
ヒカリは任務実行員という言葉を初めて聞いたので、気になりエドに問いかけた。
「あぁ、そっか。そこから話をしていかなきゃな。……まず、この会社には職種が三つある。一つ目は『受付員』で、相談所に来たお客から依頼内容を確認したりする仕事。二つ目は『事務員』で、依頼内容を詳しく確認したり費用を算出したりする仕事で、電話の窓口にもなっている。三つ目は『任務実行員』で、実際に依頼を遂行する仕事。そして、マリーが任務実行員への仕事の割り振りを決めている。そんなとこだ」
ヒカリはうなずきながらエドの話を聞いた。
「それじゃ、任務実行員を紹介していく。……まずはケンタ! 見た目どおり食欲バカだ!」
「バカは余計だ!」
ケンタはオレンジの髪をさっぱりと持ち上げたスタイルで、お世辞にも痩せているとは言えないくらい太っている、三十歳手前くらいの男の人だ。体つきからしても、たくさん食べる人なのだろう。
「次はライアン! ケンタと同い年でバイクバカだ!」
「バイクは好きか?」
ライアンは少し青みがかった黒髪を、オールバックにしている男の人だ。室内にも関わらず、サングラスをしているのは、きっとポリシーなのだろうか。
「次にリン! せっかくの容姿がもったいないナルシスト野郎だ!」
「俺はリン、顔良し、強さ良し、性格良しの最強イケメン魔法使いだ!」
リンは深緑色のイケメン風な髪型の二十歳くらいの男の人だ。たしかにナルシストな発言とポーズをしているので、そうなのかもしれない。
「そして最後に……俺も任務実行員だ」
エドも自分を指差しそう述べた。
「次に受付員のシホ。去年入社したばかりだけど、めちゃくちゃ仕事ができる期待の社員。今のところ受付員は、シホ一人でこなしている」
「よろしくね!」
シホはニッコリ笑いながらそう言った。
「次は事務員を紹介していく。……まずはマツダ。すっごく几帳面でめっちゃ仕事ができる。それとパソコンとか詳しいから、すごく頼りになるおっさんだ」
「困ったらいつでも声をかけてくださいね」
マツダは黒縁メガネをしていて、灰色の髪と口髭が特徴的なおじさんだ。男性社員で唯一ループタイを首まで締めていて、アームカバーも装着しているところを見ると、きっと真面目な性格なのだろう。
「あと一人の事務員はベル。まだ十四歳くらいの子供だ」
「はぁー? 何言ってるんですか? 今年で十七歳になるんですよ! 学校には通っていませんが、高校生の年齢なので、もう大人みたいなもんです!」
最初に事務所でエドと騒いでいた女の子は、ベルという名前らしい。身長がだいたい百四十センチメートルくらいの細身で小柄な可愛らしい女の子だ。
「これで社員は全員だ」
エドがそう言うと、ヒカリは集まってきた社員に一歩近づく。
「あの……。私の名前は『ヒカリ』と言います! 魔女見習いとして今日からお世話になります! えっと……どうか、よろしくお願いします!」
ヒカリは深々と頭を下げて挨拶をした。頭を上げると集まってきた社員達が、ヒカリに『よろしく』と返事をして自席に戻っていく。
「こんな奴らだけど悪いやつはいない。とりあえず、仕事しながら仲良くなっていけばいい」
エドは落ち着いた表情でそう言うと、事務所の奥に座っているマリーの方を向いた。
「マリー! そういや、ヒカリは何の仕事をするんだ?」
エドはマリーに問いかける。
「シホと一緒に受付の仕事かな……」
その言葉を聞いたシホとヒカリは、お互い目を合わせる。
「よろしくね」
シホは優しい笑顔を浮かべながらヒカリに言った。
「よろしくお願いします!」
ヒカリはまた深々と頭を下げてシホに挨拶をする。
「じゃ、シホ! ばら園の方にヒカリの紹介よろしくな!」
エドがシホに向かってそう言うと、シホはうなずいていた。