ヒカリはシホの隣に座った。
「九人から五人になっちゃいましたね」
ヒカリは少し下を向いてシホに話しかける。
「うん。でも、今回は多かった方かな。前回は、受験者が六人だったから」
シホはそう言った。
「そうなんですね。前回は、二次試験までだったんですよね? 一次試験を合格したのは、そのうちの何人だったんですか?」
ヒカリはシホに質問した。
「……一人だけ」
シホは浮かない顔で答えた。
「もしかして、前回の合格者って……」
ヒカリは恐る恐る言った。
「うん。ゼロ人だったの」
シホがそう言うとヒカリは言葉が出なかった。
「それだけ、魔女試験の難易度は高いのよ」
シホは落ち着いた口調でそう言ったが、ヒカリは魔女試験合格の希望が薄れていく気がして、少しだけ落ち込んでしまった。
「大丈夫! 今回はどちらかが、いや、二人とも合格できるかもしれないし! がんばろう!」
シホが優しく元気づけてくれたので、ヒカリはそのシホの笑顔を見て気持ちが戻ってきた。
「そうですね! 頑張りましょう!」
ヒカリは元気よく言った。
「うん」
シホも笑顔で返事してくれた。
一次試験が終わってから三十分が経過した時、大広間二階の奥の部屋から再び呪いの魔女が現れた。
「それじゃ、二次試験を始めるかい。死ぬ覚悟はできているかって聞いたけど、あれは脅しなんかじゃないからね。……まぁ。……死なないように気を付けな。……ほれ」
呪いの魔女がそう言うとヒカリは眠くなった。ヒカリは気がついて起き上がると、辺り一面が燃え盛る炎に包まれていた。そして、自分の体に目をやると、体中に炎がまとわりついていたのだ。一瞬で頭が真っ白になった。
「うわああああああ! 何よ! どういうこと! 体が燃える! 熱い、熱い、熱い! ぎゃあああああああ! だ、だ、誰か助けてえええええ!」
ヒカリは、体中にまとわりつく炎が熱くて痛くてわめき散らした。何がどうなっているのかわからない。ただ、苦しいなんてものじゃない状況に、のたうち回ることしかできなかった。すると、どこかから声が聞こえてきた。
「だ、誰かいるなら助けてえええ! 痛い! 熱い! 助けて! 助けて!」
ヒカリはのたうち回りながら、声のする方へ助けを求めた。すると、人影が見えたので、地べたを這いながら近づいた。
「助けて……」
ヒカリはその人影に声をかけると、固まってしまった。なぜなら、目の前にいたのが、炎に焼かれながら全身大火傷している、自分の両親だったからだ。まさかの光景に恐怖しか感じなかった。
「ヒカリー。助けてくれー。お父さん、体中が熱くて痛いんだー」
「ヒカリー。なんでママたちを助けてくれなかったのー?」
ヒカリの両親はそう言いながら、ヒカリに近づいてくる。
「……ひっ! やめて! やめて! 言わないで! 言わないで! 言わないでええええ! 熱い! 痛い! いやあああああああ!」
ヒカリは必死に這って逃げながら叫ぶ。
「それなら、あんたには来年もチャンスがあるんだから、今回の魔女試験は終わりにするかい?」
後ろから呪いの魔女の声が聞こえてきた。
「ぎゃあああああ! もう嫌だああああ! た、助けてえええ!!!」
ヒカリはまだ必死に這って逃げながら叫び続ける。
「なんでママを助けてくれなかったのー?」
「教えてくれよー」
ヒカリの両親はそう言いながらヒカリに詰め寄る。ヒカリは必死に逃げたが行き止まりに差しかかり、逃げられなくなってしまった。ヒカリの両親がじりじりと迫ってくる。
「どうだい? 楽になりたいでしょう? それなら、もう試験を終わりにするかい?」
再び呪いの魔女の声が聞こえてきた。ヒカリの両親が目の前にきて、ヒカリを掴もうと手を伸ばしてきた。
「…………も、も、もう終わりにしてええええええええ!」
焦りに焦ったヒカリはとにかく逃げたかった、苦しかった、辛かった、見たくなかった、聞きたくなかった、様々な負の感情が頭の中を巡り巡った結果、呪いの魔女に試験を終わりにするようお願いしたのだった。
「ふふ。そうかい」
呪いの魔女がそう言うと、またすーっと気持ちよくなった後、眠くなった気がした。
ヒカリは目を覚ますと会社の会議室にあるソファーで横になっていた。なんとなく胸のあたりが温かい気がして、ぼやけた視界で見てみると、誰かの手が胸に添えられていた。よく見ると、マリーが隣で椅子に座りながら、自分に魔力を送り込んでいるような状況に見えた。
「……マリーさん」
ヒカリはマリーに話しかけた。すると、最初はウトウトしているようなマリーだったが、ヒカリが起きたことに気がつくと、少しだけ笑みを浮かべた。
「あぁ。起きたようね。……気分はどう?」
マリーはヒカリに優しく問いかける。
「今は、……普通です」
ヒカリは話し始めてから少し考えた後に答えた。寝ているのも偉そうなので座ることにした。
「それなら、よかった」
マリーは安心した様子でそう言うと、座っていた椅子を少しだけ離して座り直した。するとその時、会議室の扉が勢いよく開き、ROSEの皆が流れ込んできた。
「うるさいよ! あんたたち!」
マリーは流れ込んできたROSEの皆に怒鳴る。ROSEの皆は心配そうな表情でヒカリを見ていた。ROSEの皆を見てヒカリは、急に魔女試験のことを思い出してしまった。こんなにも心配してくれる仲間がいたのに、自分はなんてことをしてしまったのだろうかと。
「みんな! ごめんなさい!」
ヒカリはROSEの皆に向けて頭を下げて力強く言い、言い終わっても頭を上げなかった。
「……私、二次試験の時、怖くて、怖くて……。最後に呪いの魔女から甘い言葉をかけられて……。それに簡単に乗ってしまうくらい、自分が弱い人間だったんだって、痛いほどわかった! ……本当にダサい! ダサい! ダサい! きっと心のどこかで、自分が受けたくて受ける試験だから、自分一人で挑んでいるものだと勘違いしていた」
ヒカリは頭を下げたまま自分の気持ちを力強く言い、言い終わると頭を上げて皆を見た。
「でも、そうじゃないよね……。こうやって皆が応援してくれてるんだもん……」
ヒカリは涙を流しながらそう言った。その後、涙を両手で拭う。
「だから! もう魔女試験を一人で受けてるって思うのをやめる! どんなに怖くてもROSEの皆の気持ちを無視したりなんかしない! 来年こそは、絶対に魔女試験合格するからーー!」
ヒカリは号泣しながらそう言った。すると、ROSEの皆も泣きながら応えてくれた。こうして、ヒカリの一回目の魔女試験は幕を閉じた。
次の日、ヒカリは体の調子も良かったので会社に出勤していた。シホは魔女試験の二次試験を突破したらしいが、三次試験が今日に延期されたそうで、今まさに三次試験を行っているとのこと。二次試験を突破したのはシホだけだったらしく、やはりあれだけの二次試験を突破できたシホの実力は、すごく高いのだと思い知った。
それから夕方になってもシホは帰ってこなかったので、ROSEの誰もがすごく落ち着きがなく心配している様子だった。その時、会社の玄関が開いた。
「いらっしゃいま……シホさん!」
ヒカリは玄関からマリーとボロボロになったシホが入ってきたので、驚いて大きな声で言った。すると、ROSEの皆も慌てて集まってきた。
「九人から五人になっちゃいましたね」
ヒカリは少し下を向いてシホに話しかける。
「うん。でも、今回は多かった方かな。前回は、受験者が六人だったから」
シホはそう言った。
「そうなんですね。前回は、二次試験までだったんですよね? 一次試験を合格したのは、そのうちの何人だったんですか?」
ヒカリはシホに質問した。
「……一人だけ」
シホは浮かない顔で答えた。
「もしかして、前回の合格者って……」
ヒカリは恐る恐る言った。
「うん。ゼロ人だったの」
シホがそう言うとヒカリは言葉が出なかった。
「それだけ、魔女試験の難易度は高いのよ」
シホは落ち着いた口調でそう言ったが、ヒカリは魔女試験合格の希望が薄れていく気がして、少しだけ落ち込んでしまった。
「大丈夫! 今回はどちらかが、いや、二人とも合格できるかもしれないし! がんばろう!」
シホが優しく元気づけてくれたので、ヒカリはそのシホの笑顔を見て気持ちが戻ってきた。
「そうですね! 頑張りましょう!」
ヒカリは元気よく言った。
「うん」
シホも笑顔で返事してくれた。
一次試験が終わってから三十分が経過した時、大広間二階の奥の部屋から再び呪いの魔女が現れた。
「それじゃ、二次試験を始めるかい。死ぬ覚悟はできているかって聞いたけど、あれは脅しなんかじゃないからね。……まぁ。……死なないように気を付けな。……ほれ」
呪いの魔女がそう言うとヒカリは眠くなった。ヒカリは気がついて起き上がると、辺り一面が燃え盛る炎に包まれていた。そして、自分の体に目をやると、体中に炎がまとわりついていたのだ。一瞬で頭が真っ白になった。
「うわああああああ! 何よ! どういうこと! 体が燃える! 熱い、熱い、熱い! ぎゃあああああああ! だ、だ、誰か助けてえええええ!」
ヒカリは、体中にまとわりつく炎が熱くて痛くてわめき散らした。何がどうなっているのかわからない。ただ、苦しいなんてものじゃない状況に、のたうち回ることしかできなかった。すると、どこかから声が聞こえてきた。
「だ、誰かいるなら助けてえええ! 痛い! 熱い! 助けて! 助けて!」
ヒカリはのたうち回りながら、声のする方へ助けを求めた。すると、人影が見えたので、地べたを這いながら近づいた。
「助けて……」
ヒカリはその人影に声をかけると、固まってしまった。なぜなら、目の前にいたのが、炎に焼かれながら全身大火傷している、自分の両親だったからだ。まさかの光景に恐怖しか感じなかった。
「ヒカリー。助けてくれー。お父さん、体中が熱くて痛いんだー」
「ヒカリー。なんでママたちを助けてくれなかったのー?」
ヒカリの両親はそう言いながら、ヒカリに近づいてくる。
「……ひっ! やめて! やめて! 言わないで! 言わないで! 言わないでええええ! 熱い! 痛い! いやあああああああ!」
ヒカリは必死に這って逃げながら叫ぶ。
「それなら、あんたには来年もチャンスがあるんだから、今回の魔女試験は終わりにするかい?」
後ろから呪いの魔女の声が聞こえてきた。
「ぎゃあああああ! もう嫌だああああ! た、助けてえええ!!!」
ヒカリはまだ必死に這って逃げながら叫び続ける。
「なんでママを助けてくれなかったのー?」
「教えてくれよー」
ヒカリの両親はそう言いながらヒカリに詰め寄る。ヒカリは必死に逃げたが行き止まりに差しかかり、逃げられなくなってしまった。ヒカリの両親がじりじりと迫ってくる。
「どうだい? 楽になりたいでしょう? それなら、もう試験を終わりにするかい?」
再び呪いの魔女の声が聞こえてきた。ヒカリの両親が目の前にきて、ヒカリを掴もうと手を伸ばしてきた。
「…………も、も、もう終わりにしてええええええええ!」
焦りに焦ったヒカリはとにかく逃げたかった、苦しかった、辛かった、見たくなかった、聞きたくなかった、様々な負の感情が頭の中を巡り巡った結果、呪いの魔女に試験を終わりにするようお願いしたのだった。
「ふふ。そうかい」
呪いの魔女がそう言うと、またすーっと気持ちよくなった後、眠くなった気がした。
ヒカリは目を覚ますと会社の会議室にあるソファーで横になっていた。なんとなく胸のあたりが温かい気がして、ぼやけた視界で見てみると、誰かの手が胸に添えられていた。よく見ると、マリーが隣で椅子に座りながら、自分に魔力を送り込んでいるような状況に見えた。
「……マリーさん」
ヒカリはマリーに話しかけた。すると、最初はウトウトしているようなマリーだったが、ヒカリが起きたことに気がつくと、少しだけ笑みを浮かべた。
「あぁ。起きたようね。……気分はどう?」
マリーはヒカリに優しく問いかける。
「今は、……普通です」
ヒカリは話し始めてから少し考えた後に答えた。寝ているのも偉そうなので座ることにした。
「それなら、よかった」
マリーは安心した様子でそう言うと、座っていた椅子を少しだけ離して座り直した。するとその時、会議室の扉が勢いよく開き、ROSEの皆が流れ込んできた。
「うるさいよ! あんたたち!」
マリーは流れ込んできたROSEの皆に怒鳴る。ROSEの皆は心配そうな表情でヒカリを見ていた。ROSEの皆を見てヒカリは、急に魔女試験のことを思い出してしまった。こんなにも心配してくれる仲間がいたのに、自分はなんてことをしてしまったのだろうかと。
「みんな! ごめんなさい!」
ヒカリはROSEの皆に向けて頭を下げて力強く言い、言い終わっても頭を上げなかった。
「……私、二次試験の時、怖くて、怖くて……。最後に呪いの魔女から甘い言葉をかけられて……。それに簡単に乗ってしまうくらい、自分が弱い人間だったんだって、痛いほどわかった! ……本当にダサい! ダサい! ダサい! きっと心のどこかで、自分が受けたくて受ける試験だから、自分一人で挑んでいるものだと勘違いしていた」
ヒカリは頭を下げたまま自分の気持ちを力強く言い、言い終わると頭を上げて皆を見た。
「でも、そうじゃないよね……。こうやって皆が応援してくれてるんだもん……」
ヒカリは涙を流しながらそう言った。その後、涙を両手で拭う。
「だから! もう魔女試験を一人で受けてるって思うのをやめる! どんなに怖くてもROSEの皆の気持ちを無視したりなんかしない! 来年こそは、絶対に魔女試験合格するからーー!」
ヒカリは号泣しながらそう言った。すると、ROSEの皆も泣きながら応えてくれた。こうして、ヒカリの一回目の魔女試験は幕を閉じた。
次の日、ヒカリは体の調子も良かったので会社に出勤していた。シホは魔女試験の二次試験を突破したらしいが、三次試験が今日に延期されたそうで、今まさに三次試験を行っているとのこと。二次試験を突破したのはシホだけだったらしく、やはりあれだけの二次試験を突破できたシホの実力は、すごく高いのだと思い知った。
それから夕方になってもシホは帰ってこなかったので、ROSEの誰もがすごく落ち着きがなく心配している様子だった。その時、会社の玄関が開いた。
「いらっしゃいま……シホさん!」
ヒカリは玄関からマリーとボロボロになったシホが入ってきたので、驚いて大きな声で言った。すると、ROSEの皆も慌てて集まってきた。