「優?優、起きなさい。ご飯よ」

お母さんの声で目が覚めた。

「あれ………今って」

「もう7時よ。優ったら、2時間ずっと寝てたんだから」

「あれ…そうだったっけ」

むくりと起き上がり、時計を見ると、たしかに7時だった。

あのあとーー授業開始時刻になっても戻ってこない私を、先生5人がかりで探したらしい。

屋上で寝ている私を発見したのは、大谷という数学教師だった。

大谷先生は、私が自殺をするつもりだったのではとかんちがいをしたらしく、あわてて保健室まで運んだそうだ。

保健室で目が覚めたとき、隣にいたのは泣きそうな顔をした早希だった。

「ごめん、優ちゃん」

「なんで?早希は何にも悪くないよ」

「でも、何か気に障ること言っちゃったかなって」

「だから早希はこれっぽっちも悪くないんだって。気にしなくていいの」

そうだ。

彼女は、何も悪くない。

「でも」

「もう、ほっといて」

自分で言っておいて本当に勝手だと思うけれど、彼女の悲しそうな顔が見たくなくて、寝返りを打って、彼女に背を向けた。

あの時の私は、どうしようもなく心がささくれ立っていた。

やっと、あの地獄のような学校から抜け出せたのに。

あの学校の呪いは、私に絡みついて離れてはくれないみたいだった。



「…優、どうしたの?そんなにぼうっとして」

「ううん、なんでもない。あ、この緑の野菜、いらない」

「一口ぐらい食べてみたらどうなの」

「いらないってば」

お母さんが呆れ顔でため息をつく。

「もう、優ったら一度嫌いになったら意地でも食べようとしないのよね。もしかしたら、今食べてみたら意外においしいかもしれないのに」

「………」

私は、無言で緑の野菜ののった皿をお母さんの方に押しやった。