「東ヶ丘第一高等学校からきました、内藤優といいます。前の学校では部活は入っていませんでした。早くみんなと仲良くなりたいなって思ってます。よろしくお願いします」

平凡という二文字がこの上なく似合う自己紹介を終え、SHRの後、予想通り私は、クラスメイトたちに囲まれ、質問攻めにされていた。

「内藤さん、部活入ってなかったの?」

「うん、そーなんだよぉ。家、学校から遠かったから」

常に笑顔でいるように。

「なるほどね、すっごい運動できそうに見えるんだけどなぁ」

「えー、そんなことないって!私、短距離苦手だし」

明るい声で、テンションは高めで。

「じゃあ長距離はどうなの?」

ドキッ、と心臓がとび跳ねる。

「あ…えっと、いや、そんな胸張って得意って言えるほど得意じゃないんだなぁ!」

「えー、そうなのー?」

「そーだよぉ」

そこで1限開始のチャイムが鳴り、私を取り囲んでいた人たちが慌ててそれぞれの席へ散っていく。

私はそっと、胸を撫で下ろした。

さっきは危なかった。

陸上の話なんて、したくなかった。

さっきの私の受け答えは、不自然じゃなかっただろうか。

きっと、大丈夫。

そう、自分に言い聞かせる。

もう二度と、あんな思いはしたくない。