キーンコーンカーンコーン。
聞き慣れない響きのチャイムを聴きながら、一歩一歩、踏みしめるように歩く。
一直線にのびる真っ白な廊下を少し行って、階段を上り、また少し進んだところにその教室はあった。
「内藤さん、少し廊下で待っててくださいね」
新しい担任の守谷薫先生の言葉に小さく頷く。
立て付けの悪かった前の学校とはまるで違う、カタン、という軽やかな音を立てて扉を開け、守谷先生は一人教室に入っていった。
『1-1 守谷学級』
教室の入り口にあるプレートには、そう書かれている。
守谷学級。私が、この9月からお世話になるクラス。
どんなクラスだろう、いじめとかあったら嫌だな。
ぶんぶんと首を振り、ネガティブな方向に行こうとする自分を奮い立たせようとする。
だめなんだ、そんな風では。私は、かわるって、決めたんだから。
未だに脳裏にちらつく人たちの影を必死に振り払おうとする。
だめだ、このままだと、また、今日も。また、あの人たちの、夢を、見てしまーーーーー、
「ーー内藤さん?どうかしたの?」
守谷先生の声に、ハッとして顔をあげる。
「あ、い、いえ……何でもない、です」
「そう。なら、入ってきてちょうだい。みんな、転校生って聞いてものすごい期待してるわよ」
「あ、はい…」
期待なんて、してほしくないけど仕方ない。
転校生に期待するななんていうのはむりな話だから。
落ち着け、私。
大丈夫、全部わかってる。
転校生というのが、注目を浴びる存在であること。
それから、クラスの中には少なからず転校生を歓迎したくない人がいるってことも。
大きく息を吸って、吐き出す。
それから、静かに一歩を踏み出した。
新しいクラスメイトの待つ教室の中へ。
今までの悪夢を、忘れ去るためにーーーーー。