七月後半、彼女に差し入れするのはコンビニスイーツからアイスクリームになった。
彼女のリクエストは毎回、シャーベット系と、コーンのタイプ、モナカタイプ、カップのバニラの四種類。保冷バッグには大量の保冷剤とドライアイス。プロのスイーツ配達人になれそうだ、と羽鳥先生からからかわれる。
「最音さん、いいかげん、ほんと人使い荒いよな」
ぼくがぼやくと、彼女は不満そうに言った。
「あのさ、ずーっと思ってたんだけど」
保冷バッグからカップのバニラアイスを勝手に取り出し、蓋をあけてしばらく待つ。少し柔らかくなってからスプーンを入れるのが彼女流の食べ方だ。
「なに?」
ぼくはやや不機嫌になりながら言った。ここまでやって、まだなにか文句を言われるのならこっちにも反論する余地はある。病気だとはいえ、最近の氷の女王はわがままがすぎる。
「わたしのこと、なんで名字で呼ぶの。サイネサン、サイネサンってさ、ぜんっぜん可愛くないし、親しみも愛情も感じられないんだけど」
「じゃあ、なんて呼べばいいんだよ。女王様とでも呼べって?」
ぼくは言った。彼女に頼まれて持ってきたアイスモナカの袋を取り出した。なにも言わずに勝手に開けて、勝手に一口かじってやる。ぼくに指図ばかりする女王にもお仕置きは必要だ。
「ちょっとそれ、わたしの!」
「買ってきたのはぼくだ。最音さんにあげるとは一言も言ってない」