七月、夏休みに入ってすぐ、蝉(せみ)の大合唱で頭が割れそうなくらい暑かったある日。

 ぼくは彼女に頼まれた、いつものコンビニスイーツセット(三店舗回った)を購入し、母のアドバイスで保冷剤を詰めたクーラーバッグにそれらを入れて、彼女の病室に飾るヒマワリ(彼女が気に入ってくれたゴッホだ)を数本束にして紙を巻いたものを片手に持って、彼女の病室へと向かった。

 最音莉愛と書かれた部屋番号のドアが開いている。ぼくはそっと中を覗く。するとそこには、白衣を羽織った男性医師が立っていた。
 なにを話していたのかは知らない。医師は若い感じでなんとなく医者っぽくない(完全な偏見なのだけど)茶髪のくるくるヘア。最音さんはそのくるくる医師となにやら楽しそうに談笑していた。

「あ、菊川くん」

 ぼくに気付いた最音さんが、弾んだ声で呼びかける。
なんだ、元気じゃん、とちょっと意地悪を言いそうになってしまったのは、くるくる医師への謎の嫉妬心からだ。こっちはコンビニ三軒回ってきてんだぞ。

「お、彼氏かな」

 くるくる医師が振り向いてぼくを見る。思ったより年齢がいってそう。若く見えるけど四十代くらいかもしれない。