ちょっと驚いたみたいな顔で、彼女がぼくを見ている。

「もう一回、言ってくれない?」

 目が、もう笑っていなかった。そのかわり、なぜか瞳が濡れているみたいにぼくには見えて、なにかしてしまっただろうかとぎょっとする。

「もう一回?」

「そう。さっきの、もう一回」

「無理だよ。言えない」

「なんでよ、一回言えたんだから言えるでしょ」

「だめ、無理だよ」

 彼女の大きな目で今度は睨まれている。怖い。氷の女王じゃなくメデューサだ。ぼくは固まってしまう。

「わたしは会いたかった。来てくれて、嬉しい。会いたかったよ」

 怒った顔のまま、彼女はぼくに向かってまるで辛辣な言葉でも吐くような感じで言った。怒らせてしまったのは間違いなくぼくだ。

「ごめん」

「なんでそこで謝るの? わたしが振られてるみたいになるじゃん!」

 今にもベッドから飛び出して殴りかかってきそうな勢いで、彼女はぼくにそう言った。もう本当にどうしたらいいのかわからない。