「あ、えと、うん。花、持ってきた」
ぼくがそう言って、袋からさっき作ったばかりのアレンジを取り出すと、彼女はそれを一目見て「わあ、ありがとう!」と言う。
そんなふうに素直に喜ばれると、なんだか調子が狂ってしまう。袋から取り出したアレンジは、出窓になっている窓際に、ぼくが置いてやる。
「すごく綺麗。ヒマワリ、好きなの。ありがとう。もう夏なんだね」
なんだかいっそう痩せたように見える彼女が言った。もともと余計な脂肪なんて一切ない顔や体から、これ以上搾り取れるものなんてあるのだろうか。確実に、弱っていると目に見えてわかる姿に、ぼくはなんと答えていいのかわからなかった。
黙って頷いていると、彼女は悪戯っぽく笑いながら言った。
「わたしに会えなくて、寂しくて会いに来ちゃった?」
へへ、とぼくをからかうみたいに目を細めて、その姿も少し痛々しいくらいに彼女は細くて、水揚げ前の花みたいに乾いて全身で水を欲しがっているみたいだ。
「寂しくてって、わけじゃないけど。でも、会いたかった」
ぼくは、口からついぽろっと、そんなことを彼女に向かって零していた。自分でも驚いたけど、なぜかその場で訂正する気にはならなかった。