取っ手付きの籠に給水フォームをセットして、ナイフ片手にアレンジを作り始める。
バラの棘や葉を取ったり、グリーンを短くカットしたりしていると、いつの間にか夢中になっている。
お客さんのイメージするものを具現化したりそれを超えようと花の組み合わせを考えているとき、ぼくはいつも気分が高揚する。
今日は自分が贈りたい相手がいて、その彼女の喜ぶものをイメージしているから余計に、気分が舞いあがっている。心の中は花を贈る相手である彼女のことで満たされていて、とても幸せな気分。彼女にはとても、花が似合う。
ビタミンカラーのオレンジのバラ。フレッシュなバレンシアオレンジみたいな鮮やかさ。淡いレモンイエローのスプレーバラはカップ咲きでころんと丸い。グリーンはたっぷりと溢れ出るみたいに入れる。白いラインの入ったナルコ。アイビーホワイトリップル、レモンリーフ。
夏の風物詩、ヒマワリはいろんな品種がある中から、ぼくの一番好きなゴッホ。繊細な花びらと花の中心にかけてのグラデーションが美しい。ゴッホの描いたヒマワリにも似たこの花で、夏が苦手な彼女に少しでも夏を感じてもらえたら嬉しい。
籠の取っ手部分には少し長めにリボンを結ぶ。ブルーのストライプのリボンは涼しげで、氷の女王にとてもよく似合いそうだ。
氷の女王が入院していたのは、偶然にもぼくが生まれた病院だった。
小さい頃から熱が出たりするたびに連れてこられた、このへんじゃ一番大きな総合病院。
広くて開放的な中庭はちょっとした緑地公園みたいだし、建物のデザインは洋館風をイメージしているのか新しいけどどこかレトロな感じだ。