彼女が学校を休み、店にも遊びに来なくなって数週間が過ぎていた。
急に来なくなった彼女を心配した両親がぼくにしつこく聞いてきたので仕方なく、彼女は病気になって入院しているということだけを伝えた。
まるで自分の娘が入院したのかと思うほど、つらそうな表情をした両親だったが、正直に言うと、ぼくだって、彼女がいなくてものすごく、寂しかった。
寂しいという表現は、少し違うような気もするのだけど、他にうまい言葉が見当たらない。学校の教室に、実家の店先に、いつもいるはずの彼女がいない。
いるはずの彼女がいないとそこだけぽかんと穴をあけたみたいに見える。
彼女という存在がぼくの中でこんなにも大きなものだったなんて、自分でも驚いた。
毎日少しずつ暑さが厳しくなっていき、真夏日と呼ばれるような日も多くなった。学校は期末テストが終わり、そろそろ夏休みに差しかかろうとしている。
見守る対象を失った、騎士でも武士でもなんでもないただのぼくは、じりじりと七月のアスファルトに焼かれていた。
そんな頃、なにも言いださずなにも行動を起こさないぼくにしびれを切らしたらしい母親が、ぼくに言った。少しいらいらしているような感じだった。女の子ってこうやって、大人になっても男にずっといらいらしているんだろう。
「あの子、入院してるんでしょう。お見舞いには行かないの?」
母が言うと、父がそれに重ねるように、
「さっさと花持ってお見舞いに行ってこい。あの子が来なくなってから、お前の顔が、毎日毎日、暗くて辛気臭いんだよ。しっかり会って、ちゃんと気持ち伝えてこんか」
ぼくは自分が毎日そんなにも切ない顔でいたのかということに驚いて、え、と思わず声を出していた。