本心の中の本心。どれくらいで彼女が退院できるのか、ぼくにはまったく見当もつかない。涼しくなったらって、具体的にはいつなのか。
 入院しなきゃならないって、本当に大丈夫なんだろうか。

【なんでも? ほんと? 約束だからね!】

 彼女からの返事が届く。しまった、なんでも、というのはちょっとサービスのしすぎだっただろうか。
 突拍子もないことを平気で提案する彼女に対し、なんでも付き合うと約束するのはちょっとリスクが高いような気もしなくはない。

【あの、なんでも、ってとこだけ訂正してもらえる?】

 ぼくが送信するとすぐに返事。

【だめだよ。武士に二言はないでしょうが】

 ぼくは武士ではなく騎士であるはずで、しかもその騎士というポジションだって半ば強制的につかされたものだ。

【最音さんの『なんでも』って、かなり怖いんだけど】

 ぼくがそう送ったあと、もう返事は来なかった。訂正は断固として受け付けない姿勢が氷の女王の名にふさわしい。