ぼくはあれこれと考えを巡らせて、ようやく彼女に連絡する決心をし、スマホを手に取る。メッセージの送信画面を開き、彼女になんと送ろうか考えた。
【久しぶり。元気?】
却下。元気じゃないから休んでるわけで。
【体調はどう? 毎日暑いね】
却下。なんとなく白々しい。
【約束の、空の写真、送ります。遅くなってごめん】
なんのひねりもないけれど、これでいいだろう。
女の子に自分からメッセージを、それもたいした用事もないのに送るというのは初めてだ。ぼくにはこれが限界なので許してほしい。
この一文と空の写真の画像を一緒に送信すればいい。簡単だ。
あの夜の写真。
ほんの少しへこんだ月と、川沿いの道の夜の闇。彼女とふたりきりで歩いた道。ちょっと不思議な気持ちになった夜。
送信し終えるとなんだかすごく疲れていた。けれど彼女がこれを見て、一瞬でも退屈を忘れてくれたならそれでいい。