彼女の隣でぼくは、彼女の通学鞄や手提げバッグなどの荷物を彼女のかわりに持たされている。父が持ってやれと言ったのだ。
母が眉を八の字にして言った。
「迷惑なんて、そんなわけないわ。気にしなくていいの。元気になってよかったわ。また遊びに来てちょうだいね」
「おい明日太、ちゃんと無事に送り届けるんだぞ」
父はぼくに念を押すように言う。付き添いがぼくでは不安らしい。
「わかってるって。大丈夫だよ」
そのやり取りを見て、最音さんがふふっと笑う。
「大丈夫です、お父さん。菊川くんって、意外に頼りになるんですよ」
ぼくは一瞬、どきっとしてしまう。彼女がぼくの父を『お父さん』と呼んだことも、頼りになるなんて言われたことも。
「意外にってなんだよ」
ぼくがぼやくと母が、
「あら、意外ね」
と言って、彼女と顔を見合わせて笑う。女同士ってなんでこうなんだろう。
父がまたそれを見て笑いながら言った。