「モデル並みのルックスでわがままで金持ちのお嬢様って、もうなんかいろいろやばいよな」

　剛はそんなふうに言うけれど、なにがいろいろやばいのか、ぼくにはいまいちぴんとこない。

　ちなみに剛はぼくの同級生でもあり幼馴染でもあり、ぼくの一番の理解者だ。
　仲が良いとか悪いとか、好きとか嫌いとか、気が合うとか合わないとか、そんな意識を持つより前からの濃厚な関係。
　お互いの両親が親しいということもあり、ぼくらは常に一緒だった。ほとんど兄弟か双子といってもいいくらいに。

ぼくは保育園のときの剛の初恋の相手を知っているし、剛はぼくがまだ恋をしたことがない、ということを知っている。
　喧嘩という喧嘩をしたことがないのはぼくらの性格があまりに正反対だから。

　明るくてスポーツ万能、大雑把で女の子にモテる剛と、地味でスポーツも不得意、手先は器用だが女の子全般が苦手なぼく。

自分とかけ離れた存在でありながら、誰よりも近い存在、それがぼくにとっての剛だ。

　いつも近くにいて当たり前だった存在は、ついに高校までも一緒になった。