「じゃあ、枯れた花はよくないなんて、簡単に言わないで」
少し怒ったように、彼女がぼくに向かって言う。
ぼくらが会話をしているのが不思議なのだろう。クラスの誰もが、横目でぼくと彼女のことを観察しているのがわかった。
ぼく自身だって不思議なのだから仕方ない。ぼくはまたしても、慌ててなにかを取り繕うように、彼女に言った。
「枯れた花がよくないって言いたかったんじゃないよ。つまり、その、なるべく近いうちに、また店に来たほうがいいってこと」
彼女はその大きな目を見開いて、少し笑った。
「菊川くんって、正直だよね」
ぼくはつい、恥ずかしくなって目を逸らす。穴があったら入りたかった。