「うわ、可愛い。すごく可愛い」
ぼくの手元を見て、彼女は言った。ぼくは素直にとても嬉しかった。自分の選んだ組み合わせが客に喜ばれたときはいつだって嬉しいものだ。
淡いピンクのガーベラに、レモンイエローとクリーム色のスイートピー、卵色のマトリカリア、淡いピンクの芍薬、アイビーホワイトリップル。
わざわざ説明するのは恥ずかしいから言わないが、芍薬を入れたのは最音さんのイメージだった。立てば芍薬。リクエストの香りにはスイートピー。マグカップに入れたときに可愛い感じになるように長さのあるアイビーをくるりと巻き付けておいた。
ぼくは花束の茎を切りながら、最音さんの部屋はどんなだろうと想像してしまうのを止められなかった。
これが飾られるのは勉強机? テーブル? それともベッドサイドだろうか。
だめだ、これじゃあ変態じゃないか。
「思ったよりもずっといい。なんか感動しちゃった」
彼女がそう言ってぼくを見る。このセリフはどうやら嘘ではなさそうだ。
「気に入ってもらえてよかった」
ぼくが花束を茶色のペーパーで巻いて彼女に手渡す。お金を払おうとした彼女に、父が言った。
「今回は、明日太の仲良しの友達ってことで、サービスだ。明日太はまだ見習いだし、今回はお金はいらない。また来てくれたら、次からは友達割引はするけどきちんと代金をいただくよ」
父の言葉に、最音さんは大きな目を見開いて、ぼくを見る。母もうんうんと言って頷いた。
「ぜひまた来てね。お喋りしに来るだけでもいいから」
お喋りしに来るだけでもいいはずなんてないだろ、とぼくは思ったが、母は本当に嬉しそうだった。母がこんなことを言うなんて、余程彼女のことが気に入ったのだろう。