ぼくがそう彼女に言うと、後ろから父親が口を挟む。
「お客さんに対してなんだ、その言葉遣いは。もっと丁寧に言わんか」
「そうよ、こんな可愛いお客さんめったに来ないんだから。真面目にやんなさい、真面目に」
と母親までぼくに文句をつけてくる。だからぼくは花屋じゃないって言ってるだろ、とつい言い返してしまいそうになる。
最音さんはそれを聞いてまた笑う。そして彼女はぼくの両親に向かって、とても丁寧な口調でこう言った。
「いいんです。大丈夫です。わたしたち仲良しですし、わたし、菊川くんには大きな借りがあるんです。偉そうにされても文句は言えないんです」
仲良しになった覚えもなければ、大きな貸しを作った覚えもない。あるとするなら、助け舟を出したのに平手打ちをされたことくらいだが、あのときのお礼もまだ言われておらず学校でも無視をされているぼくとしては、なんとなく腑に落ちない。けれど両親の表情はとても嬉しそうで、ぼくはため息をつく。
「いつから仲良しになったんだよ」
ぼくが言うと、
「明日太、あんた、なに照れてんの」