ぼくが言うと、最音さんは片方の眉を上げて、

「菊川くん、探偵みたいな話し方するね」

 と言ってまた笑う。彼女は丸椅子から立ち上がり、生花の入ったバケツを眺めながら言った。

「そうだ、菊川くん、わたしに花束作って。部屋に飾るの。小さいのでいいから。お願い」

 その瞬間、彼女はクラスメイトから客になる。

 ぼくは気が乗らないながらもカウンターの外側に出て、ほとんど反射的に「花瓶持ってるの? 長さどれくらい」と聞いてしまう。

「そっか、花瓶か。わたしの部屋にはない。家にはあるけどあんまり可愛くないから小さい花瓶買おうかな」

「ないなら、使ってないマグカップとか、ジャムの空き瓶とかならあるだろ。短くて小さい花束でいいならそんなので十分飾れるよ」

 ぼくが言うと最音さんは、ぱあっと明るい表情になる。

「菊川くん、なんか花屋さんっぽい」

「花屋の息子ではあるし、確かにこうやって手伝ってはいるけど、ぼくは花屋じゃない。で、どんな花飾りたいの? この花だけは絶対入れたいとか、こんな色がいいとか、なんかないの」