私は、その合法ドラッグに大して興味を抱かなかったが、わざわざ通販で高いお金を出して買ったとしても親にバレる事は、間違いなく、アカネにその購買方法は、良くないと指摘した。
「え~、じゃあ、どうすれば手に入るの?」
 
 私は、中学生になってから自慰行為の虜になってしまった時期があり、だんだん普通の自慰行為だけでは、満足がいかない状態だった。私自身、勉強も全く出来ず学校も全く楽しくない時期だったので、毎日の自慰行為だけが、私を救ってくれる正に「聖なる儀式」だった。
 近所の、人通りの少ない場所に看板も何もない小さな飛びっきり怪しげな深夜営業の店がある事は、突き止めていた。私は、深夜に自宅の玄関では無く、二階の自分の部屋の窓からホームセンターで予め買っておいた頑丈なロープを使って外へ出て、ワクワクしながら、その店に向かった。
 そこは、いわゆるポルノショップと呼ばれる店だった。周囲の目を気にしながら恐る恐る店内に入ると多分アルバイトだろうオタクのような太った店員が、いらっしゃいませの一言すら言わずにチラッと私の方を一瞥してガムを噛みながら、漫画雑誌を読んでいた。
 店内は、かなり変わった雰囲気を存分に発揮していて、私は、何か悪い事をしている後ろめたさと、それでも興味を存分にそそられる両方の感情が入り混じって店の奥に進んだ。
 店の奥に入ると、壁には、何やら等身大の裸の女の人形の様な物がぶら下げてあった。棚には、大量のエロ本やエロビデオが並んでいたが、私の目的のモノは、そんなありふれたモノでは無くて、他のコーナーの自慰グッズにも興味をそそられずに、その頃には、恐れや後ろめたさは、全く無くなっていて再び入り口近くのヒマそうな変な店員に近づいて質問してみた。
「あの~、すみません」
 店員は、少しビックリした様子で私を見た。
「このお店の、おススメの商品って何ですか?」
 今にして思えば、当時中学一年生の私が、深夜にこんな所でこんな質問を店員に投げかけている事自体、かなりエキセントリックだったと思う。
「目的によるけど……何が欲しいんですか?」
 店員は、意外と愛想よく丁寧な口調でそう聞いてきたので、私は、しばらく考え込んでいたが、カウンターのショーケースの中に置いてある商品を見た瞬間に思わず、
「これは、何ですか?」
 それは、素直な質問だった。
「合法ドラッグですよ」