「プリントアウトしなくていいんですか?」
 施設長は、優しい笑顔を浮かべながらさっきまで私が書いていた文書をプリントアウトしてくれた。
「お疲れ様でした。明日のMRIまでゆっくりと過ごしてくださいね」
 施設長から渡された文書の用紙を渡されて、私は、静かに頷いた。


 アカネの自宅に着いた頃、私は、歩いたせいか緊張からか、大量の汗をかいていた。ハンカチで、丁寧に顔や首元の汗を拭きとってから私は、やや震える手でインターホンのボタンを押した。
「いらっしゃい!早かったね!」
 玄関のドアを開けて出てきたアカネは、水色のシャツに真っ白なミニスカートをはいていて私は、その可愛らしい姿を見て再び暴れ馬が覚醒しない様に少し、目を逸らせた。
「今日は、誰もいないから遠慮しないで入って!」
 アカネは、学校に居た時とは違って髪の毛を軽く束ねて後ろから見るとうなじが見えていて私は、何とも言い難い気分の高揚感を感じていた。
「ミル君、カルピス飲むでしょ?」
「あっ、はい!いただきます!」
 動揺して敬語を使った私にアカネは、思わず吹き出してしばらく笑いが止まらない様子だった。
「あ~あ、ミル君って結構面白いじゃん!」
 そう言ってアカネは、氷を入れたカルピスを小さなお盆に乗せて二階へ上がっていった。
私は、アカネの後ろをギクシャクした動作でついていった。

 階段を上る途中に上を見てしまった。アカネのミニスカートの裾からピンク色の下着がチラチラと見えてしまい、私の下半身は大変な事になり、滑稽な前屈姿勢でなんとか二階まで上がりきった。

 アカネの部屋は、きれいに整理整頓されていて全体的に女の子らしい雰囲気を醸し出していた。壁には、当時売れていた男性アイドル歌手のポスターが貼ってあった。

「適当に座って。一緒にカルピス飲もっ!」
 私は、もはやロボットのごとくぎこちない動作で何とか用意されていたクッションの上に落ち着く事に成功した。
「そ、そ、それで……」
「うん?」
「教えてほしい事って、な、何かな?」
 この時点で、私は頭の中が真っ白だったと記憶している。
「うん、勉強の事じゃないの。分かる?」
「えっ!じゃあ、一体……」