私は、小さくそう呟いてワクワクしながら、二階の自分の部屋に入った。ミルサーは、無かったので、私は、リタリンの錠剤をジッパーの付いたビニール袋の中に入れて袋が破れない様に丁寧に少しずつ上から潰してまずは、二錠だけ粉末状にする事に成功した。

 
 施設内での、この日の手記の入力作業が、二時間を超えたため私は、素早く文書を上書き保存して自分の部屋に戻った。部屋に入ると数人の患者達が、私の帰りを待っていた。
いずれも、暴力団関係の患者達だった。
「お前さ~、一人だけ毎日パソコン使っていい気なもんだなぁ~!」
 連中の中の一人がそう言って、私に近づいてきた。
「ちゃんと、施設長の許可を得ていますし、インターネットで遊んでいるわけでは、ありません」
 私は、毅然とした態度でそう言い放った。
「お前、弁護士なんだって?偉そうによぉ~!」
 そいつは、私の胸倉を掴んで、ベッドの上に叩きつけるように押し倒した。
「ヤク中の弁護士さんよぉ~、自分で自分の弁護したって、ここは、法廷じゃないんだよねぇ~」
 私は、何も迷うことなく、そいつの顔面めがけて唾を吐いた。
「んっ!てめえ何しやがるんだ!」
 その後、しばらくの間私は、そいつとその仲間達と取っ組み合いのケンカになり、職員が止めに来た時には、数で劣っていた私の顔面は、無様に腫れあがり、体中に強い痛みを感じていた。

 
 粉末状にしたリタリンを、短く切ったストローで鼻から吸引すると瞬間的に気分の高揚感を得る事が出来た。私は、不敵な笑みを浮かべて真夜中である事を忘れて、
「ヒャッホ~!」と叫んでいた。
 声を聞いた母が、部屋に入ってきた頃には、私は、楽しい気持ちで続けざまにリタリンの粉末作りに、没頭していた。母は、私の様子を見て、直ぐにリタリンの袋を全て取り上げて少し困ったような表情を浮かべながら、小さな声でこう言った。
「リタリンは、お母さんが責任持って管理します。鼻吸引は、即効性があって効き目も強いけど、その分作用時間が短くなるし、乱用に繋がります。クスリの事は、お母さんに任せてください!」