アカネと私の禁断の行為は、その後も続いていたが、私自身が少しうんざり気味になってしまい、中学校を卒業する間近あたりからアカネとの行為自体、そしてプライベートで会う事も無くなっていった。アカネが、自宅の自分の部屋で変死していた事実を聞いたのは、私が千葉市の私立の進学校である高校に合格した頃だった。クラスメイトを始め、担任の教師から突然知らされたショッキングな出来事は、私の心の中で小さな悲鳴にも似た冷たく、渇いた絶望感を突き刺して、学校内の男子トイレの個室に入って、泣きながら嘔吐した記憶が、今でも私の胸を締め付けるような感覚として大きなトラウマとなって残っている。

 施設内のパソコンで、過去の記憶を辿りながら、この文章を書いていると私自身、余りにも思い出したくない記憶まで書かざるを得なくなってしまい、その度に、強烈な罪悪感に心身共に支配されていく感じが、どうしてなのか?一種の快感にも似た気分にさせられる錯覚が、二時間という制限時間の中で、度々起こっていて、時折、人間なんて所詮こんなもんなんだろうと思うようになっていった。つまり、誰が死のうが、苦しもうが、人間にとって一番大切なのは、自分自身であり、自分さえ幸せになれれば、他の人が、どうなろうと私にとっては、知った事では無かったのかも知れない。アカネや母親に対しても、複雑な感情が入り混じる事は有っても、自分自身が楽しく生きていければ、それで良かった。人生は、ボランティアのような奉仕の世界では無い。自分を犠牲にしてまで他人を助ける精神など少なくとも私は、持ち合わせていない。どんなに不条理で残酷な事件が起こっても、テレビやインターネットの画面を通して見るその類のニュースには、心動かされる事は、まず無かった。

 アカネの死後、私は、あのポルノショップへと足を運んだ。店内に入ると最初にアカネと一緒に来た時の金髪の店長が、カウンター席に座っていた。
「あ~、君かぁ~、来てくれるのを待ってたんだよ!」
 店長は、そう言って席を立って私の元に近づいてきた。
「あの娘、亡くなったんだって?」
「はい、死因は、恐らく……」
「だろうね。あの後、あの娘一人で度々ここに来てさぁ~」
「やはり、そうでしたか……」
「もっと強烈なのを売って下さいって何度も懇願されて、俺は、ヤバい事になるから止めとけって言ったんだけど……」