そうは言うものの、申し訳なく思った亨は武田の提案に遠慮し断ってしまう。

「大丈夫だって言ったろ? 自分で出来る事は出来るだけ自分でやりたいんだ。その方がリハビリになるしね。それにかあさんもたまには来てくれるだろうし」

「そう? そこまで言うのならもう何も言わないけど」

「それよりごめんね、僕が怪我したせいでたくさんの仕事をキャンセルしなくちゃいけなくなって」

「そんなこと良いのに、あなたが悪いわけじゃないじゃない」

「でも結果的に怪我して仕事に穴をあけたのは僕だからさ。とにかく武田さんもそのコーヒーを飲んだら帰っていいよ」

「なに? 何だか追い出すみたいね」

そう言う武田の表情はやわらかな笑みを浮かべており、そんな武田に対し亨も同様に笑顔で返す。

「ごめんそんなんじゃないんだ。ただ武田さんにここにいられたら武田さんの事頼っちゃいそうで……」

「分かったわ、これ飲んだら帰るわね」

ここで亨は武田に対し一言謝罪する。

「ほんとごめんね、結果的に追い出すような感じになっちゃったね」

「良いのよ、翔の言うことも分かるから」

その後コーヒーを飲み終えた武田は、心配な気持ちを心に押し込め翔のマンションを後にした。