「僕の本名知らない？　亨(とおる)だよ吉田亨。子供の頃よく遊んだろ。よく顔を見てごらん、どことなく面影あるの分からない？」

その名前を聞いた陽菜は幼き日の記憶がよみがえった。

「もしかして亨兄ちゃん？　ほんとだ亨兄ちゃんだ、まさかこんな所で会うなんて思わなかった。それも亨兄ちゃんがあの大スターの翔だったなんて」

二人の会話を聞いて驚きつつも陽菜に尋ねる由佳。

「なんだ二人知り合いだったの？」

由佳に対し満面の笑みで興奮気味に応える陽菜。

「そうなの、小さいころよく遊んでもらった亨兄ちゃん。昔はあたしたちお隣さん同士だったのよ。でも亨兄ちゃんの家が引っ越してしまってからは会えなくなっちゃったんだよね」

この時由佳はまさかの二人の関係に驚きつつも感心していた。

「陽菜が顔も知らない翔の事を一生懸命応援していたのも分かる気がするなぁ？　なんだか不思議な縁ね」

（そう言えば由佳の紹介まだしてなかったわ）

「紹介が遅れたわね、この子あたしの親友の由佳、いつもお見舞いに来てくれるの」

陽菜の紹介に続くように自らも自己紹介をする由佳。