陽菜がその体温計を取出し矢嶋に差し出すと、それを見た矢嶋の顔が一瞬にして曇っていくのが見てとれた。

「陽菜ちゃん、今日も翔さんの所に行くのかな?」

「もちろん行くに決まっているじゃない、何かまずいですか?」

「そうねぇ、申し訳ないけど今日は無理ね、翔さんの所に行くのは控えて頂戴」

「どうして?」

「陽菜ちゃん今日少し熱があるのよ。昨日は少しはしゃぎ過ぎたんじゃない?」

「はしゃいだつもりはないんだけどなぁ、どうしても無理ですか?」

「ごめんなさい今日はおとなしくここで寝ていてくれる? 明日熱が下がればまた行っても大丈夫だと思うから」

この日も亨のもとに向かうつもりでいた陽菜は亨のもとに行くことを禁じられてしまったため落ち込んでしまい、いささか残念に思っていた。

「はぁい分かったわよ、今日はおとなしく寝る事にします。元気なのになぁ? でも亨兄ちゃんにもらったプレーヤーだけは聞いていて良いでしょ」

「仕方ないわね、まぁ良いわ。でもずっとはだめよ、最低でも一時間聞いたら十分休むこと、そうしないと耳によくないからね。それに熱がある時くらい少しは休まないと……」

「分かったわよ千夏ちゃん」