「えぇもう少しいいじゃない、久しぶりの再会なんだから」

「そんな訳にいかないよ、それに結局さっき看護師さんに見つかっちゃったしね。病棟は違うけど恐らく陽菜のいる病棟の看護師に連絡が行くだろうし、そしたら嘘ついてここに来たのがばれちゃうでしょ」

「なんだ嘘まで付いてここに来たのか?」 

そう言いながら苦笑いを浮かべる亨はさらに続ける。

「だったらこれからは陽菜たちだけは嘘なんかつかずに堂々と来られるように話しておくから、これからも体の調子のいい時にでも来たらどうだ? 俺も足がよくなって車椅子に乗れるようになったらそっちに行くから」

「良いのありがとう。来てくれるの楽しみに待っているね」

これまでにないほどの満面の笑みを浮かべた陽菜であったが、その後すぐに俯いてしまった。

「でも大丈夫? 亨兄ちゃんみたいな有名な人が病棟をうろうろしていたら大騒ぎになるんじゃないの?」

「大丈夫、心配する事ないよ」

「それなら良いんだけど」

陽菜は納得の言葉を口にするが、それでも完全に納得したわけではなかった。

「とにかく今日はもう帰るね、じぁあね」

「じゃあな、また来てくれるの待っているからな」

その後陽菜は寂しい気持ちを抑えつつ、由佳に車椅子を押されながら特別室を去っていった。