「なんだこんな事って、何があったんだよ」

「想いを寄せていたのは陽菜だけじゃなかったみたいなの、亨君も陽菜の事が好きだったみたいなのよ」

「どう言うことだそれ」

「先に言い出したのは陽菜の方だそうなの、もし手術に成功したら結婚してって言ったそうよ。でも亨君は陽菜の言葉は本気じゃないって見破っていたそうなの。それでも亨君は結婚に応じたそうなのよ、もし手術が成功したら結婚するって」

父親としての不安が的中してしまいやや動揺してしまった浩史であったが、後にあいてが亨ならと納得する事になる。

「どうしていきなりそんな話になるんだ、まさか結婚だなんて」

「やっぱり驚くわよね。でもお父さん考えてみて、もし亨君と再会しなかったら、もし結婚なんて話が出なかったらあの子は今回の手術も受けなかったのよ。亨君のおかげなのよ、それにありがたい事に亨君はあんな体の陽菜でも良いと言ってくれているわ」

「そうだな、ここは感謝すべきなのかもしれないな? でもここにその亨君がいないのは何故なんだ?」

「彼今日は大事な音楽祭の授賞式があって来られないのよ、終わったらすぐに駆けつけてくれるって」

「そうなのか、いい結果になるといいな」

その後も不安な気持ちを心に押しこめ、何時間も手術が終わるのを待ち続ける二人。

そして時間が経つにつれ話すこともなくなり、ただただ手術が無事に終わるのを祈るしかない二人であった。