数日後陽菜の発作は収まり、午前の回診を終えその後昼食を食べていると主治医の栗原医師がやって来た。

「陽菜ちゃん良い知らせだ」

「なんですか? 良い知らせって」

「さっき連絡が来たんだけどな? 臓器移植ネットワークから知らせが来て脳死判定の出た患者さんがいてその人の心臓が陽菜ちゃんに移植できるかもしれないことが分かったんだ」

「ほんとですかそれ、その人の心臓を移植すればあたし治るの?」

ようやく移植できることにうれしさを感じた陽菜であった。

「あぁ治るぞ! 幸いその人はドナーカードを持っていたし家族の承諾も得ている」

ところが次の瞬間陽菜は手術に対する恐怖により俯いてしまった。

「でもなぁ? やっぱり手術怖いよ、心臓を取り換えるんでしょ」

「心配しなくて大丈夫だよ、陽菜ちゃんは僕に安心して任せてくれればいいんだから」

「ごめんなさい、先生が信用できない訳じゃないの。でも怖いのよ、少し考えさせてくれる?」

「分かったよ、でもゆっくりもしていられないからなるべく早くしてね。それと陽菜ちゃんの病気は移植しないと完治する事は無いって事を頭に入れておいてね」

「はい分かっています」

「それじゃあもう行くから、移植の事良く考えてみて」

「はい」

そうして栗原医師は陽菜の病室を後にすると、その後すぐに母親の陽子に連絡を入れた。