アンは朝早くに起きます。
ビビの母、ティナについて回り、
タブレットで彼女の行動を記録します。
ビビの姉、エリカの弁当を作るために
白米を炊き、冷蔵庫の食材から
料理を次々に作る姿は魔法のようです。
地球での家庭料理の風景は珍しく、
タブレットで録画しながら
アンは目を輝かせて見ています。
冷蔵庫内のカメラとタブレットをリンクさせ、
内容物を確認します。
特に冷凍庫のアイスは念入りに。
それからアンは別の仕事にとりかかります。
ビビとエリカを起こして、
脱いだパジャマを洗濯機に。
ビビとエリカは洗面台の前で、
寝癖のついた髪を梳かしています。
「おはよう、アンちゃん。」
「おはよう、エーちゃん。
弁当はなにが好き? アイス?」
「アイスはお弁当に入らないかな。」
「そうか…。」
アンはがっかりと肩を落とします。
エリカのさらさらな髪と違い、
ビビはふわふわした髪のせいで
寝癖とひたすら格闘していました。
アンもそれを手伝います。
手持ち無沙汰になっているエリカは、
アンの毛を梳かして、みつあみにしました。
「ビビは?」
「あたしは給食だから弁当はないよ。」
「アイスでる?」
「出ない。あ、たまに出る日もあるかも。」
「アイス持ってくか?」
「持ってけないよ。溶けるでしょ。」
「持ってけないのか。」
アンは再び肩を落としました。
4人で朝食にします。
アンはトースターの見張りに夢中でした。
しかしタイマーのベルが鳴っても
パンを取り出しません。
「なにしてるの?」
「パンを焼いてる。」
「焼けたのに?」
しゃがんで毛玉になるアンの隣に、
ビビがトースターの扉に手を掛けました。
「ダメ。
開けるとトースターの熱が外に逃げる。」
「どういうこと?」
「トースターの中の熱をパンに与える。
熱力学の第2法則。」
「宇宙で得られる熱は大事だからよね。」
アンの説明に続いて
ティナがビビに言って聞かせます。
しかし意味を理解していないビビは、
釈然としない気持ちで席に戻りました。
そこでエリカが説明を補足します。
「水は高いところから低いところに流れるでしょ?
熱も同じで差があると低い方に温度移るのよ。
パンの温度も表面を焼いただけで、
内側は低いから予熱で中まで温めてるの。
冷凍させたパンで確かめてみるといいよ。」
「ふーん…。冷凍させると?」
「焼いてもすぐだと、中がほんのり冷たいの。
ありがと。」
「お召し上がりなされ。」
アンが焼いたパンをテーブルに持ってきました。
ビビがひと口噛むとサクリといい音が鳴り、
パンの中はいつもより温かく柔らかです。
「なんかいつもと違う。
パン変えた?」
「中がすごいしっとりしてる。」
「トースターの湿度と温度管理をこだわった。」
「アンちゃんはこれから
トースター奉行名乗っていいわよ。」
「ぶぎょー?」
「鍋奉行みたいに言う。」
「えらい役職よ。」
「昇級したのか。
ありがたく拝命する。」
冗談で与えられた役職名を仰々しく受け取って
それからアンもティナと自分の分のパンを焼いて、
朝食を食べました。
「行ってらっしゃい。」
「アンは? 学校行かないの?」
「なんで?」
「なんでって…?」
ビビは宇宙人が学校に通う理由を説明できません。
「われは地球を調査する大事な使命がある。」
「ビビ、早く行かないと遅刻になるよ。」
有耶無耶なまま、
ビビはひとり学校に向かいました。
宇宙人の毛むくじゃらが学校に通うのは
おかしなことだとは自分で納得しましたが、
ビビは寂しいという感情には気づきません。
アンはふたりを見送ってから、
洗濯物をベランダに干します。
下着は屋内の一角で除湿機の上に。
それから階段を掃き、掃除機をかけ、
浴槽の掃除をして昼ごはんになりました。
昼ごはんの後は食器を洗い、
サクラ家の中の動画を撮り、
タブレットの記録を編集してまとめ、
リビングで海岸で拾った石を眺めたりと、
アンは忙しそうにしています。
「そろそろ時間よ。」
母のティナが声をかけたので、
タブレットを持ったまま
アンは家を飛び出します。
向かった先はビビの通う学校でした。
「ビビー!」
授業が終わった教室に、
アンが現れてビビは驚きます。
金髪のアクタも驚きます。
「どうしたの?」
「迎えに来た。」
「ウチすぐそこなのに。」
「ごはん、アイス出た?」
「給食? 出てないよ。」
「われはママさんとアイス食べた。」
「アイスまだある?」
「ビビはあとでわがはいといっしょに買い物。」
「おつかい? そういうことか…。
またアイス食べるんでしょ。」
アンが迎えに来た理由を察しました。
「あれ食べよう。チューブのやつ。」
「アンのせいでウチのアイスが
全部なくなっちゃいそう。」
「大丈夫。わがはいが
アイスをチェックしてる。」
アンが持ってきたタブレットで、
アイスのリストを出したので
ビビは微笑みながらあきれました。
「ちゃっかりしてる…。」
ビビの母、ティナについて回り、
タブレットで彼女の行動を記録します。
ビビの姉、エリカの弁当を作るために
白米を炊き、冷蔵庫の食材から
料理を次々に作る姿は魔法のようです。
地球での家庭料理の風景は珍しく、
タブレットで録画しながら
アンは目を輝かせて見ています。
冷蔵庫内のカメラとタブレットをリンクさせ、
内容物を確認します。
特に冷凍庫のアイスは念入りに。
それからアンは別の仕事にとりかかります。
ビビとエリカを起こして、
脱いだパジャマを洗濯機に。
ビビとエリカは洗面台の前で、
寝癖のついた髪を梳かしています。
「おはよう、アンちゃん。」
「おはよう、エーちゃん。
弁当はなにが好き? アイス?」
「アイスはお弁当に入らないかな。」
「そうか…。」
アンはがっかりと肩を落とします。
エリカのさらさらな髪と違い、
ビビはふわふわした髪のせいで
寝癖とひたすら格闘していました。
アンもそれを手伝います。
手持ち無沙汰になっているエリカは、
アンの毛を梳かして、みつあみにしました。
「ビビは?」
「あたしは給食だから弁当はないよ。」
「アイスでる?」
「出ない。あ、たまに出る日もあるかも。」
「アイス持ってくか?」
「持ってけないよ。溶けるでしょ。」
「持ってけないのか。」
アンは再び肩を落としました。
4人で朝食にします。
アンはトースターの見張りに夢中でした。
しかしタイマーのベルが鳴っても
パンを取り出しません。
「なにしてるの?」
「パンを焼いてる。」
「焼けたのに?」
しゃがんで毛玉になるアンの隣に、
ビビがトースターの扉に手を掛けました。
「ダメ。
開けるとトースターの熱が外に逃げる。」
「どういうこと?」
「トースターの中の熱をパンに与える。
熱力学の第2法則。」
「宇宙で得られる熱は大事だからよね。」
アンの説明に続いて
ティナがビビに言って聞かせます。
しかし意味を理解していないビビは、
釈然としない気持ちで席に戻りました。
そこでエリカが説明を補足します。
「水は高いところから低いところに流れるでしょ?
熱も同じで差があると低い方に温度移るのよ。
パンの温度も表面を焼いただけで、
内側は低いから予熱で中まで温めてるの。
冷凍させたパンで確かめてみるといいよ。」
「ふーん…。冷凍させると?」
「焼いてもすぐだと、中がほんのり冷たいの。
ありがと。」
「お召し上がりなされ。」
アンが焼いたパンをテーブルに持ってきました。
ビビがひと口噛むとサクリといい音が鳴り、
パンの中はいつもより温かく柔らかです。
「なんかいつもと違う。
パン変えた?」
「中がすごいしっとりしてる。」
「トースターの湿度と温度管理をこだわった。」
「アンちゃんはこれから
トースター奉行名乗っていいわよ。」
「ぶぎょー?」
「鍋奉行みたいに言う。」
「えらい役職よ。」
「昇級したのか。
ありがたく拝命する。」
冗談で与えられた役職名を仰々しく受け取って
それからアンもティナと自分の分のパンを焼いて、
朝食を食べました。
「行ってらっしゃい。」
「アンは? 学校行かないの?」
「なんで?」
「なんでって…?」
ビビは宇宙人が学校に通う理由を説明できません。
「われは地球を調査する大事な使命がある。」
「ビビ、早く行かないと遅刻になるよ。」
有耶無耶なまま、
ビビはひとり学校に向かいました。
宇宙人の毛むくじゃらが学校に通うのは
おかしなことだとは自分で納得しましたが、
ビビは寂しいという感情には気づきません。
アンはふたりを見送ってから、
洗濯物をベランダに干します。
下着は屋内の一角で除湿機の上に。
それから階段を掃き、掃除機をかけ、
浴槽の掃除をして昼ごはんになりました。
昼ごはんの後は食器を洗い、
サクラ家の中の動画を撮り、
タブレットの記録を編集してまとめ、
リビングで海岸で拾った石を眺めたりと、
アンは忙しそうにしています。
「そろそろ時間よ。」
母のティナが声をかけたので、
タブレットを持ったまま
アンは家を飛び出します。
向かった先はビビの通う学校でした。
「ビビー!」
授業が終わった教室に、
アンが現れてビビは驚きます。
金髪のアクタも驚きます。
「どうしたの?」
「迎えに来た。」
「ウチすぐそこなのに。」
「ごはん、アイス出た?」
「給食? 出てないよ。」
「われはママさんとアイス食べた。」
「アイスまだある?」
「ビビはあとでわがはいといっしょに買い物。」
「おつかい? そういうことか…。
またアイス食べるんでしょ。」
アンが迎えに来た理由を察しました。
「あれ食べよう。チューブのやつ。」
「アンのせいでウチのアイスが
全部なくなっちゃいそう。」
「大丈夫。わがはいが
アイスをチェックしてる。」
アンが持ってきたタブレットで、
アイスのリストを出したので
ビビは微笑みながらあきれました。
「ちゃっかりしてる…。」