『はい、伊藤弁護士事務所ですが』

女性事務員が電話に出ると彼女に対し五十嵐が尋ねる。

「五十嵐と言いますが伊藤先生はいらっしゃいますか?」

『伊藤先生ですね、少々お待ちください』

「先生先日の五十嵐さんという方からお電話です」

「こっちに回してくれる?」

警察署に行ってくれると言っていた五十嵐からの電話であったため、期待と不安を胸に受話器を取る伊藤。

『お待たせいたしました。どうしました五十嵐さん』

「先ほど警察に行ってきました」

『わざわざそのことを連絡いただいたんですか、ありがとうございます』

「いえとんでもないです。ただそのことでお会いしたいのですがこれから伺ってもよろしいでしょうか?」

『それは構わないですが何かありました?』

「それはお会いした時に」

『分かりました、ではお待ちしておりますので気を付けていらしてください。場所は分かりますか?』

「いただいた名刺に住所も書いてありましたので分かると思います」

『では目印だけ伝えますね』

そういうと伊藤は目印になる建物や店などを伝え五十嵐の到着を待つことにした。