「おはようございます社長、弁護士の伊藤先生がお見えになりました」

(伊藤? ああ外国人どもが雇った弁護士の事か)

佐々木はここでも居留守を使おうとする。

『席を外していると言ってくれ!』

「かしこまりました」

受話器を置いた事務員は伊藤の方に向き直り、あきらかな嘘を付く。

「申し訳ありません、社長は現在席を外していまして……」

そんな苦し紛れの嘘もすぐにばれる事となる。

「また居留守ですか、では今話していたのは誰なんですか? 逃げていても何度だって来ますよ。もう一度社長に伝えてください、あなた方がいつまでもその様な態度でしたら我々は法的手段に出なけれはなりませんと」

法的手段に訴えると言ったもののほぼはったりのようなものであり、この時の伊藤にはまだそのつもりはなかった。

「分かりました、お待ちください!」

(何だろう法的手段て、うちの会社不正でも働いているのかな?)

そう思いながらもその事務員はもう一度社長室に内線電話をかける。