「まあ少し落ち着け、ちゃんと話すから」

一度ゆっくりとみんなを見渡したマイクは説明を続ける。

「弁護士の先生が録音された音声を一通り聞いたあと明日すぐにでも社長に会ってくれるそうだ」

「そうか、それで何か変わるかもしれないんだな」

「そう言う事だ、もちろんすぐにとはいかないかもしれない。でもこれで一歩前進したかもしれないな」

翌朝一番に会社にアポイントの電話をした伊藤であったが、あきらかに居留守をつかわれたのが分かったため直接出向くことにした。

「ごめん下さい」

伊藤の声に事務の女性が応対に出る。

「いらっしゃいませ、どういったご用件でしょう?」

「お忙しいところ申し訳ありません、わたくし伊藤弁護士事務所の伊藤と申します。佐々木社長にお会いしたいのですが」

「アポイントはお取りでしょうか?」

「いえ取っていないのですが、なにしろ居留守を使われてしまうもので」

嫌味っぽく言ってのける伊藤。

「少々お待ちください」

事務の女性は徐に受話器を持ち上げると内線電話をかける。