「僕も同じタイミングでパスポートを渡すよう言われました。多分ほかのみんなも同じだと思います」

「そうでしたか、あと日本人の社員はあまり働かずにあなた方ばかりに働かせているとも聞きましたが」

伊藤が尋ねるとそれに応えるエリック。

「そうなんです、日本人はあまり働かないで僕たちばかりが働いていました。その事をほとんど現場に来ない工場長は知りません」

「それで給料が八万円しかもらえないのはあまりにもひどいですね!」

「日本人の社員に言われたんです」

「何と言われたんですかマイクさん?」

「外国人より日本人の方が偉いって、外国人のくせに身の程を知れと言われました!」

「そんな事を言ったんですか?」

(外国人のくせに身の程をしれだと? なんて差別的な発言なんだ)

そのように思ってしまう伊藤。

「それだけではありません。工場長には僕たち外国人よりも日本人の方が優秀なのは決まっているって、能力の劣る僕たちに高い給料を払えないと言われました。でも実際には日本人にしかできない仕事というのはなく僕たちも日本人と同じ仕事をしています。工場長にはほかにも言われたことがあって」

「まだ何か言われたんですか?」