「なんなのよそれひどすぎるわ、それってあきらかに外国人差別じゃない! だいたいパスポートを取り上げるって何なのよ、それって動きを封じておいて飼い殺しにしようって事なの? それにもしものことがあったらどうするつもりなの? 外国人となると職質を受けてパスポートを求められることもあるだろうに」

森宮の突然の怒りの声に周りにいた人物がびくりと驚くと、一斉に振り返りマイクたちを見ていた。

ところがこの話にはまだ続きがあった。

「もっと許せないのは日本人はいつもさぼっていて僕達ばかりに仕事をさせる事です」

「それほんとなの?」

「はいほんとです。工場長はあまり現場に来ないのでこの事を知りません」

「分かったわ、少し時間をくれる? 知り合いの弁護士がマイクさん達の様に不利益を被っている外国人労働者の支援をしているの。その人に相談してみるわ」

わずかに希望が見えた気がしたマイクの表情はわずかながら晴れやかなものになっていく。

「ほんとですかひなた先生」

「任せて、じゃあ今日はもう遅いから帰りましょうか」

「はい、よろしくお願いします」

笑顔でそう言ったマイクはわずかな希望を胸に寮へと帰っていく。