「え、どこ?」

 見上げた木の枝には顎の下が黒くてお腹が白い小さな鳥がいた。

喉を震わせてピルルピルルとさえずっている。すぐにもう一羽がやってきて二羽で仲良く歌い始めた。

それがオオルリなのか他の鳥なのか私には区別がつかない。

せめて青い羽が見えないかと背伸びをして目を凝らした。

ふらついた私は咄嗟に彼のシャツを掴んだ。ふわりと懐かしい香水の香りが鼻をかすめた。

「青くないじゃない」

「下からは見えてないだけだよ」

不満そうにつぶやく私に彼はそう言うと目尻に皺を寄せて笑った。

私は鳥の足跡のようなその皺に触れたくて手を伸ばしていた。