とても久しぶりに自然を感じた気がした。緑に溢れる遊歩道をゆっくりと歩くと、日差しも風も草の匂いもすべてが新鮮に感じられた。
耳を澄ませば鳥の鳴き声も聞こえてくる。
「オオルリっていう鳥知ってる? 夏にやってくる渡り鳥でピールーリーって鳴くんだ。しかも体は瑠璃色」
瑠璃色ってどんな色だっけ。彼が野鳥に詳しかったなんて初めて知った。それとも今日のために調べできてくれたのだろうか。
野鳥の観察エリアには鳥のイラストと名前や特徴の描かれたボードがあった。オオルリの名前の横には彼の言ったとおりの説明が書かれていた。イラストの青い鳥は翼を広げて美しい青い背中を見せている。
ふたりで青い羽が見えないかとしばらく梢を見上げていた。ふと隣を見ると青空に縁どられた彼の横顔。後頭部には勢いよく跳ねた寝癖。思わずプッと吹きだした。
「かっこつけちゃって」
青い鳥はピールーリーと澄んだ高い声で歌い、彼の頬の上には木漏れ日がいたずらな模様を描いていた。
つないでいた手に汗をかいているような気がして手を引くと、するりとほどけた掌を風が優しくなでていった。私の手を離れた彼の手がすっと伸びて枝の上を指さした。
「いた!」