忘れかけていた一年前のこの日を思い出した。何ヶ月もかけて準備した結婚式の二度目の延期かキャンセルかの選択に迫られた日。わたしは結婚自体を延期することに決めた。

キャンセル料は見積り金額の三十パーセント。結婚式ができないという辛さに追い打ちをかけられ、私は結婚自体に希望を失った。

母は二十五年前の震災で結婚式ができなかった。ついそのことを忘れて「お母さんの結婚式の写真見せてよ」と言ったわたしに、母はわずかに顔を曇らせた。口には出さないけれど心残りがあるにちがいない。

その分娘の結婚式を楽しみにしていたはずで、余計に結婚式を挙げないまま家庭を作ってしまうことが嫌だった。

外はよく晴れていた。確かに一日家の中でごろごろ過ごすにはもったいない。顔を洗ってクローゼットを開け、クリーニングの袋がかかったままのワンピースに手を伸ばした。

淡いグリーンのワンピースはお気に入りだった。仲人をお願いした恩師のところへ結婚を取りやめたことを報告に行くときに着てから、なんとなく袖を通せないままだった。