「君の方が信じらんないよ、彼女にあんな事言うなんて。彼女は関係ないじゃないか」

ここで亜梨紗は俯き落ち込みつつ遥翔に尋ねるものの、その瞳に涙は無かった。

「遥翔さんあの子の事好きなの？」

「そういう訳じゃないけど」

「じゃああの子の言っていた通り付き合っている訳じゃないのね、だったらまだあたしにも希望はあるのよね」

「別に付き合っている訳じゃないよ、でも何れそうなりたいと思っている。それに君みたいな事をする子を僕は好きになれない。だから僕の事はもういい加減あきらめてくれ」

「どうして？　あたしは遥翔さんの事こんなに想っているのに、どうして遥翔さんは振り向いてくれないの？」

思わず声を張り上げた亜梨紗。実はこの時亜梨紗は遥翔と言う人物を好きなのではなく、大スターである遥翔の彼女と言うステータスがほしかったに過ぎなかった。

「悪いな、君じゃダメなんだ」

「そんなにあの子の事が良いの？」

「ゴメン！　諦めてくれ」

プライドを傷つけられた亜梨紗はその日の収録で心ここにあらずといった感じで仕事に身が入らなくなっていた。

そのため収録後マネージャーに怒られ最悪の一日となってしまった。

さらに追い打ちをかけるように後日遥翔と杏奈が仲良く同じテレビ番組に出ているのを自宅のテレビで見ていた亜梨紗の心には杏奈に対する強い嫉妬心が植えつけられ、亜梨紗にとって杏奈は憎むべき相手となっていた。