「じゃあ御両親を事故で亡くしたって言うのもほんとなの?」

「ほんとだよ、それで親戚中をたらいまわしにされた挙句、引き取り手の無くなった僕は施設に入る事になったんだ」

「辛くなかったの?」

杏奈の問いかけに昔を懐かしむように遠くを見る目で応える遥翔。

「そりゃ最初は辛かったよ。学校に行っても親のいない施設の子だと言う事でいじめられた事もあったしね」

「そうだったんですか、あたしには想像できないなイジメなんて、辛かったんですね。ご両親がいなくて寂しくなかったんですか?」

「そりゃ最初の頃は寂しかったよ、毎晩のように泣いていたからね。でも今ではさみしいと思ってないよ、施設で大勢の仲間達と巡り合えたし、それに芸能界に入った事でもっと多くの人たちと出会う事が出来たしね」

「そうなんですね、もしかしたら時間が解決してくれたのかな?」

「時間が解決か、確かにそうかもしれないね。僕の話はこれでおしまい、それより君の事教えてよ。君の名前はなんていうの?」

突然名前を聞かれてドキドキしてしまう杏奈。