現場に着いた杏奈は車から降りるとまず目の前にいた人物に元気いっぱいに挨拶をした。

「おはようございます、杏奈と言います。新人なのでまだまだ至らない事ばかりですが今日はよろしくお願いします！」

ところがその人物は訳が分からずキョトンとしており、次の瞬間現場にいたほかのスタッフたちから笑いが起きた。

「おはよう杏奈ちゃん、元気いいねぇ、今日はよろしくね。けど杏奈ちゃんその人はスタッフじゃないよ、たまたま通りかかったただの通行人だ。良く見てごらん、その人犬を連れているだろ？」

「えっそうなんですか？　ほんとだぁワンちゃん連れてる。あたしスタッフの方かと思って思いっきり挨拶しちゃいました。恥ずかしい」

顔を真っ赤にして恥ずかしがる杏奈。でもこの一件でガチガチだった杏奈の緊張がほぐれる事となり、それと同時に教えてくれた人物がオーディションの時の中野カメラマンだという事が分かったため少し安心する事が出来た。

「よしっそれじゃあ始めようか、早速着替えて来て」

中野のその一言により着替えに行くと、同時にメイクも済ませて戻ってきた杏奈。

「お待たせしましたぁ、よろしくお願いしまぁす」

「じゃあ早速始めようか」