「お前今までそんな事一言も言った事なかったじゃないか!」

「確かにパパやママの前ではそんな事言った事ないわ、あたしにモデルなんて出来る訳ないと思っていたもの。それにもしあたしがモデルになりたいと言ってもきっとパパの事だからまじめに取り合ってくれなかったでしょ、でも本当はずっと前から憧れていたの」

「そんなこと言ったって会社はどうする。小さな会社とはいえ内定貰ったんだろ? だから上京して東京で暮らす事を許したんじゃないか」

「内定は辞退するしかないわ」

この時杏奈は父親である直樹の目をしっかりと見る事が出来ず、思わず俯き視線を逸らしてしまった。

「何バカな事言っているんだ! ようやく内定も決まってこれから入社式だって言うのに。お前はこれから社会人になるんだぞ、そんな無責任な事でどうする!」