この時直樹は突然の思わぬ人物の出現に一体何事かと驚いていたが努めて平静を装っていた。だがその落ち着きもすぐに失われていく事になる。

「遥翔と言う名前だけは聞いた事があります、すごく有名で人気のある方ですよね。なんでも最近では海外でも活躍されているとか、それでそのタレント事務所の方がうちなんかに何の用です?」

「やだお父さん、結構知っているじゃない」

こう言い放ったのは未だ浮かれきっており緊張感のかけらもない玲子の言葉であった。

「この位はな?」

ここで本題に入る岩崎。

「実は本日伺ったのは杏奈さんにうちの事務所とモデルとしてタレント契約を結ばせて頂きたいと思いまして、その前にご両親のお許しを頂きにまいりました」

「お願いパパ、モデルになるのが小さい頃からの夢だったの、その夢が今叶おうとしているの」

杏奈が懇願するが直樹の表情も遥翔同様依然硬いままであり、岩崎の申し出にそれまで浮かれていた母親の玲子もこの言葉により表情を強ばらせていく。