その四日後、遥翔は事務所の社長室にいた。

「なんですか突然呼び出して、さっき収録終わったばかりで疲れているんですけど」

「そうだったわね、申し訳なかったわ。そんな事よりあなたが連れて来たあの子良いじゃない、なにより礼儀正しいわ、挨拶もきちんとできるしね。どんな世界でも挨拶は大事な事だけど特にこの業界はきちんと挨拶できる事は大事な事よ」

「て事は合格ですか?」

「もちろん。人間性も申し分ないようだしね」

「そうですか? やっぱりな、いけると思ったんだ」

杏奈がオーディションに合格したと聞かされ自分の事のように嬉しさがこみ上げる遥翔。

「そうね、磨けば光る原石かもしれないわ。よく見つけて来たわねあんな良い子、今時珍しいんじゃない?」

「そんなに良いっすか?」

この時思わず遥翔の顔はほころんでいた。

「それで一つ聞いておきたいんだけどあなたあの子に特別な感情抱いてないわよね」

「なんすか? 特別な感情って」

この時遥翔は岩崎の言っている言葉の意味が分からず思わず首を傾げていた。

「恋愛感情よ、持ってないわよね」

「そんなの持っている訳ないじゃないですか、どうしてそんな事になるんです?」

思わず笑い飛ばす遥翔であったが、自分の感情に気付くまでそれほど時間はかからなかった。