次に杏奈はお気に入りのビーズクッションを指さした。

「もう一つついでに言っちゃうと、そこのビーズクッションはもっと古いんですよ。それはあたしが初めて自分のお小遣いで買ったものなんです。だから随分と色褪せてくすんじゃっているでしょ?」

「確かに色褪せているね、でもこういうのも味があっていいじゃない」

物を大事にする杏奈の姿に感心しきりの遥翔であった。

「そうですか? 自分では普通の事なんですけど」

その間に杏奈はマグカップを二つ用意し、電気ケトルでお湯を沸かすとコーヒーを淹れ、一方を遥翔の前に差し出した。

「ごめんなさいインスタントで、コーヒー好きなんだけど引っ越したばかりでコーヒーメーカー買ってなくて」

「良いよどんなでも、インスタントでも旨いじゃない」

「そうですか?」

「僕もコーヒーは結構好きだけどわざわざコーヒーメーカーで淹れる必要ないよ」

その後二人は楽しくお茶を愉しみ、遥翔は夜遅くにアパートを去っていった。

「じゃあ杏奈ちゃんコーヒーごちそうさま」

「こちらこそ今日はいろいろとありがとうございました」