「それは良いですけど」

「けど杏奈ちゃん、僕はメリットの無い事はしないよ。確かに直接的に僕にメリットがある訳じゃないけど事務所にとってはメリットのある事かもしれないでしょ?」

その直後杏奈は事の重大さに初めて気付き、突き出した両手を激しく振りながら自らを否定した。

「て言うかあたしがモデル? 無理ですムリムリ、絶対に無理。そんなあたしがモデルだなんてそんなのなれる訳ないじゃないですか」

「何言っているの、モデルになりたいって言ったのは君の方だよ。だから僕が社長に推薦したんじゃない」

「確かに言ったけど、今まであたしは何もない田舎の小さな島で育ったんですよ。そんな田舎者のあたしがモデルだなんてなれる訳ないじゃないですか。夢のまた夢です」

この時の杏奈は自分に自信が持てないという感じであった。

「だからこれからオーディションするんじゃない、それにモデルになるのに生まれ育った土地は関係ないよ。勘違いしないでね、まだこれからオーディションだからそれに受からなきゃモデルの話は無しだよ」

突然の大きなチャンスに不安になる杏奈。